市場や株価を動かす経済指標 どんな指標がどのような影響を与える?

市場や株価を動かす経済指標 どんな指標がどのような影響を与える?

ある企業の株式を持っている場合、業績が良ければその株価は上昇する、といった傾向があることはわかりやすいと思います。

同様に、景気が良いと考えられる材料があれば一般に株価は上昇し、景気が悪いと考えられる材料があれば一般に株価は下落する傾向があります。

こうした景気の動向を示す様々な数値が、国内外で定期的に発表されています。
「経済指標」と呼ばれるこれらの数値について知ることは資産運用に役立つだけでなく、経済のしくみを垣間見るツールにもなります。
今回は、その主なものを見ていきましょう。

国内の主な経済指標

ここでは、国内の主な経済指標について紹介していきます。耳なじみのあるものとそうでないものがあることでしょう。

GDP(=国内総生産)

国内で生産されたモノやサービスによって一定期間内にいくらの付加価値が生まれたかという、まさに経済の状況を示す値です。
内閣府から、3か月ごとに四半期の数値が発表され、1年ごとに年間の数値も発表されます。

また、GDPには「名目GDP」と「実質GDP」があります。
名目GDPは単純に生産数と価格を掛け合わせて算出されたものですが、実際には原材料価格が上下することがあります。
すると企業の「儲け」は変わってきます。この価格変動を除いたものが「実質GDP」です。
実質GDPのほうが実態経済を知る上で重視されています。

景気が世界全体の実質GDPに反映されたわかりやすい例として、今回の新型コロナウイルスのパンデミックがあります。下の図を見てください(図1)。

図1 世界全体の実質GDP成長率の推移

出所)経済産業省「新型コロナウイルスの影響を踏まえた経済産業政策の在り方について

新型コロナウイルスの影響により、物流が滞ることで原材料の仕入れが難しくなり、モノの製造に制限をもたらした結果、供給が減少しました。
さらに所得が減り、外出が制限される等、結果としてモノやサービスの需要も大きく落ち込みました。
これらの結果、2020年の世界全体の実質GDPは大きく落ち込んでいます

また、この図には、もう一か所、数値が大きく落ち込んでいるところがあります。2008年に起きた「リーマン・ショック」の影響です。
金融システムの破綻に対する警戒が世界中で投資家心理に悪影響をもたらし、株価は大きく下落し、その結果、企業の資金繰りが厳しくなり世界同時不況を招きました。

消費者物価指数(CPI)

消費者物価指数は、家計が購入するサービスの価格動向を示す指標です。
物価は、一般的に、経済活動が活発になり需給がひっ迫すると上昇率が高まり、逆に経済活動が停滞し需給が緩むと上昇率が低下するため、経済の状況を見極めるうえで重要な指標となります。
消費者物価指数は、毎月総務省統計局によって発表されますが、「総合」、「生鮮商品を除く総合」、「生鮮商品およびエネルギーを除く総合」の3つの値が強調されていることが資料を覗いてみるとわかります。
「総合」は、すべての対象商品を考慮して算出されたものであり、CPIという言葉を使う際はこの総合指数を指します。生鮮魚介や生鮮野菜等、生鮮食品を除いた指数がある理由は、天候に左右される価格変動の振れ幅が大きい商品の影響を除くためです。より正確な物価動向を掴めることから、コアCPIと呼ばれています。さらにエネルギーを除いた指数がある理由も同様で、資源高等の影響を除くためであり、この指数はコアコアCPIと呼ばれます。
一般的に株式はインフレに強い資産と言われていますが、物価指数が変動する要因は複雑なので長期金利の動向などと合わせて、個別の株式毎に、株価への影響を慎重に見極める必要があります。

日銀短観

日銀短観は、国内の企業が景気についてどのように感じているかを調査・数値化し、日銀から発表されるものです。
全国の約1万社の企業を対象に、それぞれの企業が自分の会社の景況をどのように感じているか、先行きをどうみているか等の項目について質問した調査結果です。
主に「DI」の数値が公表されます。

この「DI」のうち代表的なものが、大企業の中で景況が「良い」と答えた企業の数から「悪い」と答えた企業の数を差し引いたものです。景況によってはマイナスとなることがあります。

景況が「悪い」と考える企業が多ければ、設備投資等が控えられ、機械メーカーや関連企業にマイナスの影響を与える可能性が考えられます。
「良い」と考える企業が多ければ、設備投資等の活動が活発になる可能性があると考えられます。
それぞれ、株式市況等の結果に応じた影響を与える傾向があると言えるでしょう

鉱工業生産指数

鉄鋼、一般機械、電気機器、精密機器、輸送用機器、繊維工業品、紙・パルプ製品、食料品、たばこ、医薬品等の鉱工業製品の生産量を指数化したものです。経済産業省が毎月公表しています。
鉱工業製品の生産が活発であることは経済状況が良いと考えるひとつの材料になりますので、株式市場等では注目度の高い統計です

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「先行指標」にも注目

また、経済指標の中には、先行きを予測する材料になるものがあり、「先行指標」と呼ばれます。
その代表的な指標の一つが内閣府から発表される「機械受注」です。機械メーカーが受注した設備投資用の機械の受注額を集計したものです。

企業が設備投資をするということは、新しい機械を導入したり、機械を買い換えたりする行為です。これは、将来的な増産等を意図した行為であり、先々の需要が背景にあるということです。
つまり、設備投資は企業に、将来的にプラスの影響をもたらす可能性が高いと判断される材料になります。
このように、機械受注額から企業活動の活発さを推し量ることができるのです

機械受注が好調であれば株価は上昇する、と投資家が判断する材料になる傾向があると言えるでしょう。

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海外の経済指標

国内だけでなく、アメリカで発表される統計も日本の株価に影響を与えることがあります
まず、アメリカの雇用統計です。

アメリカ労働省が毎月発表するもので、アメリカの雇用状況を調査したものです。なかでも「非農業部門雇用者数」「失業率」が注目されています。
「非農業部門雇用者数」が注視されるのは、農業は景気の影響を受けにくいためです。

グローバル経済の中では、特にアメリカの景気動向は日本企業の業績にも影響します。とりわけ自動車等の輸出関連企業の企業活動は、輸出先の景気に左右されがちです。

またアメリカの小売売上高も、アメリカの景気を測る指標として株式市場等では注視されています。

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経済の基本的なしくみを知れば景気が見える

普段意識することは少ないかもしれませんが、経済の基本は「ものを作ったりサービスを提供したりすることで利益を得る」というものです。

単純なように見えますが、そこには原材料が必要であったり、機械が必要であったり、流通が必要であったりと多くの要素が隠れています。先行指標の一つの機械受注がそうであるように、景気の動きはこうした所からまず表れてきます。

よって、日々の株価だけを見て一喜一憂しても実態経済を把握することはできません。

ここで紹介したもの以外にも、様々な経済指標があります。
新聞や証券会社のホームページ等に掲載されていますので、チェックすることで経済のしくみを知ることにもつながります。

また、指数の特性と株価が連動しない場合、その理由を想像してみるのも良い勉強になるでしょう。

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