株式を購入すると、決算後数ヵ月のうちに株主総会の招集通知が送られてきます。
株式投資を始めたばかりの人が招集通知を受け取ると、「どうしたらいいんだろう?」と迷うこともあるでしょう。
株式投資を行うにあたっては、株主総会にはどういう意味があるのか、招集通知にはどう対応すればいいのか、しっかりと理解しておきたいところです。
本記事では、上場会社における株主総会について、投資初心者向けに分かりやすく解説していきます。
株主総会の基本
株式会社では、一般的に会社の所有権は株主にあります。経営は株主が選任した役員が行うという仕組みになっています。通常の経営判断や日々の業務決定などは役員に任せており、株主が何かを決める必要は基本的にありません。
とはいえ、会社に関する全てを役員が決められることになっていたら、株主にとって不利益な意思決定が行われてしまうことも考えられます。そのため、誰を役員にするかという部分も含めて、会社に関する根本的なところについては、会社の所有者である株主が決めることになっているわけです。
この根本的な部分の意思決定を行う場が株主総会であり、株主総会は株式会社における最高レベルの意思決定機関と言えるでしょう。なお、株主総会は会社の株主によって構成されるため、上場会社の株主総会には非常に多くの株主が参加することになります。
(目次へ戻る)
株主の権利
株式会社は、所有と経営が分離されるという建て付けになっています。株式会社における株主の権利について整理しておきましょう。株主の権利は多くのことが会社法で定められていますが、会社法105条1項の以下の3つが基本になります。*1
- 剰余金(会社があげた利益)の配当を受ける権利
- 解散時に残余財産の分配を受ける権利
- 株主総会における議決権
最初の2つ(剰余金の配当、残余財産の分配)は、株主本人の利益に関係する権利のことで「自益権」とも言われます。*2一方、残りの株主総会における権利は、株主全体に関係する権利で「共益権」とも言われます。*3
なお、こういった株主の権利は、所定の基準日において株主名簿に株主として掲載されている人に与えられます。株式を購入してから株主名簿に記載されるまでにはタイムラグがあるので、株主の権利を確実に得たい人は注意が必要です。
(目次へ戻る)
株主総会の種類
株主総会は、招集される時期によって以下の2つに分類されます。
- 定時株主総会
- 臨時株主総会
定時株主総会は、決算後一定期間内に招集される株主総会のことで、
基本的に年1回は開催されることになります。招集通知を受ける場合、この定時株主総会に関するもののことが多いでしょう。
定時株主総会では、役員が事業内容の報告をして、株主との間で質疑応答が行われます。
役員の選任、剰余金の配当といったテーマを中心に、決議が行われることになります。
なお、定時株主総会以外にも、必要があればいつでも株主総会を開催することができます。
この定時株主総会以外のタイミングで行われる株主総会が、
臨時株主総会です。
臨時株主総会は緊急で株主総会の決議が必要となった場合に開催されます。
頻度は少ないのですが、テーマが大きい可能性もあるので、臨時株主総会が開催される際には十分に注意して下さい。
(目次へ戻る)
株主総会の決議方法
株主総会では、複数の株主の意見をまとめて意思決定を行う必要があります。株主は保有する株式数に応じて議決権が与えられており、この議決権ベースで決議が行われるのが基本です。
ちなみに、上場会社であれば多くの場合、株主総会に参加しないでも書面による議決権の行使が可能です。また、近年では電子投票を採用している会社も増えてきており、スマートフォンから手軽に議決権が行使できることもあります。*4
株主総会の決議方法は決議する内容によって異なります。
主要な決議方法として挙げられるのは、以下の3つです。*5
・普通決議
・特別決議
・特殊決議
それぞれの具体的な決議要件と、決議する内容について見ていきましょう。
普通決議
普通決議は、株主総会において基本となる決議方法です。
決議要件は、原則として以下のようになっています。
- 全体の議決権数の過半数を有する株主が参加
- 参加した株主の議決権合計のうち過半数を有する株主が賛成
まず、全体の議決権数の半数を超える株主が参加しないと、そもそも株主総会として成立しないことになっています。その上で、参加した株主の議決権のうち過半数以上で、決議が通るという形です。
普通決議の対象となるテーマは幅広いのですが、例えば以下のようなものが挙げられます。*6
- 役員の選任・解任(監査役の解任など例外あり)
- 剰余金の配当
- 役員報酬
それぞれ株式会社であれば、通常出てくるテーマです。招集通知を受け取った際、上記についてはよく目にすることになるでしょう。
特別決議
特別決議は、普通決議に比べて株主への影響が大きいとされるテーマについて行う決議方法です。決議要件は、原則として以下のようになっています。
- 全体の議決権数の過半数を有する株主が参加
- 参加した株主の議決権合計のうちの3分の2以上を有する株主が賛成
1つ目の株主総会が成立するための要件については、普通決議と同じです。ただし、参加した株主のうち3分の2以上の議決権が必要となる形になっています。
特別決議の対象となるテーマは、会社法309条2項に定められています。*7ここでは、その中から一部を紹介しておきましょう。
- 定款の変更
- 解散
- 事業の重要な一部の譲渡
- 組織変更・合併・会社分割などの組織再編
- 監査役の解任
- 役員等の損害賠償責任の一部免除
- 株式併合
このように、会社に大きな変更を伴うなど、重要性の高いものが並んでいることが分かると思います。こういったテーマについては、より多くの株主の賛成が必要となっています。
特殊決議
特殊決議は、特別決議よりもさらにハードルが高い決議方法です。決議要件は、原則として以下のようになっています。
- 議決権を有する株主の半数以上が賛成
- 全体の議決権数の3分の2以上を有する株主が賛成
特殊決議では、株主の頭数としても半数が賛成する必要があります。これに加えて、参加した株主の数に関わらず全体の3分の2以上の議決権が必要ということで、非常に条件が厳しくなっている形です。
この特殊決議の対象となるテーマは、会社法309条3項に定められています。*8
- 全ての株式に譲渡制限をかける定款の変更
- 株主に対して譲渡制限株式が対価として交付されるような一部の組織再編
いずれも株式の譲渡制限に関するもので、保有する株式が売却できなくなるようなケースだと考えてください。これは株主にとって非常に大きな制約であるため、極めて強い要件が定められているわけです。
(目次へ戻る)
積極的に株主総会に参加しよう
株主総会の概要について、基本的なところから解説してきました。株式投資をする場合、株主総会は多くの人が体験することになるイベントですので、しっかりと内容を把握しておく必要があります。
ちなみに、株主総会に出席するとお土産がもらえるような会社もあります。また、物理的に出席ができなくても、スマートフォンから議決権を行使するだけで、クオカードがもらえるような会社もあります。
このように、株主総会に参加することでちょっとしたリターンが得られることもあるわけです。
株式を購入した際には、単に保有して値上がりを待つだけでなく、世の中の仕組みや投資先企業を知る意味でも、積極的に株主総会に参加してみるのも良いかと思います。
*1 出所)e-Gov法令検索「会社法第105条1項」
*2 出所)auカブコム証券「金融/証券用語集 - 自益権」
*3 出所)auカブコム証券「金融/証券用語集 - 共益権」
*4 出所)三菱UFJ信託銀行「インターネットによる議決権行使のご案内」
*5 出所)e-Gov法令検索「会社法第309条」
*6 出所)e-Gov法令検索「会社法第309条1項」
*7 出所)e-Gov法令検索「会社法第309条2項各号」
*8 出所)e-Gov法令検索「会社法第309条3項各号」
・投資信託のリスクと費用については、こちらをご確認ください。
・当ページは当社が作成した情報提供資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。投資信託をご購入の場合は、最新の投資信託説明書(交付目論見書)および目論見書補完書面の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
三菱UFJ国際投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員