次世代型交通システムMaaSとは 日本に普及すると生活はどう変わる?

次世代型交通システムMaaSとは 日本に普及すると生活はどう変わる?

MaaS(Mobility as a Service)はこれまでとは全く異なる次世代型交通システムで、その利便性と効果には現在の常識を覆すインパクトがあります。
個人の移動を効率化するだけでなく、都市部での交通渋滞や環境問題の対策、地方における交通手段確保にも効果があり、新しいビジネスモデルも産み出しています。
さらに、MaaSのために収集したデータを活用すれば近未来の都市計画も策定可能で、スマートシティに欠かせないサービスでもあります。
MaaSはどのような仕組みで、私たちの生活をどのように変えるのでしょうか。

MaaSがもたらすメリット

MaaSとは

MaaSはまだ発達途中の新しいサービスであるため、導入が進んでいる海外においても定まった定義がありません。*1:p.2

国や研究者によっても定義の内容や含まれる範囲に違いがありますが、 2015年のITS世界会議で設立されたMaaS Allianceでは以下のように定義されています。*1:p.2、*2:p.2

「MaaSは、いろいろな種類の交通サービスを、 需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合することである」

図1はMaaSの概念図です。*3:p.19

図1 MaaSの概要

出所)国土交通省(2018)「「第8回 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 参考資料集」p.19

MaaSは私たちの生活、そして社会にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
主要なものをみていきましょう。

個人の利便性の向上

まず、私たちの生活にもたらされるメリットについて考えていきましょう。

MaaSの特徴は、「ひとつのサービス」として、手元のスマホで、検索・予約・決済が一括して行えることです。*3:p.19

例えば、電車やバス、飛行機など複数の交通手段を乗り継いで移動する場合、現在ではそれらをつなぐ移動ルートを検索することは可能ですが、予約や運賃の支払いは、それぞれ別個にする必要があります。

しかし、MaaSは、それらを一括で済ませることができるのです。
しかも、図1のように、交通機関だけではなく、移動に伴うニーズを満たすために、小売店舗や宿泊施設、医療・福祉、観光地などとも連携した、「ひとつのサービス」として、移動に付加価値が与えられます。

またMaaSは、状況に応じてユーザーにとって利便性の高い交通手段を手軽に利用できるようになることが期待されています。駅から離れたところに住んでいても、自宅まで自動運転車を呼んで駅まで行き、電車に乗り、駅から目的地まではタクシーを使うこともできます。
もし、気候が穏やかで外出が快適な時期には、バイクシェアを選ぶこともできます。
事故や天候によって普段とは別ルートで移動する場合にも、すぐに新しいルートを探し出せます。既にMaaSを社会実装しているフィンランド・ヘルシンキでは、毎月定額で指定範囲内の電車やタクシーなどが乗り放題、いつもとは異なる路線・交通手段を利用した場合にも交通費精算手続きが不要となるサービスもあります。

MaaSの社会実装が実現したら、このように、状況に応じてユーザーが最も望む交通手段をより手軽に使えるようになることが期待されています。さらに、こうしたサービスがあれば、高額の維持費を払って自家用車を持つ必要もなくなり、家計にもメリットをもたらします。

ビジネス面でも、交通費精算の簡素化が実現し、通勤手当や出張などの経費精算が省力化できます。

都市・地域の持続可能性の向上

次に、都市や地域にもたらされるメリットをみていきましょう。*4

まず挙げられるのは、都市での交通渋滞解消です。
近年は都市への人口流入が世界的な傾向となっています。

MaaSが構築できれば、公共交通機関やコンパクト・モビリティなどの新しいタイプの電気自動車(図2)、自転車や自動車をシェアするシェアサイクルやカーシェアなどを利用して、効率的に移動することが可能になり、自家用車による移動が減るため、都市の交通渋滞が改善します。

図2 超小型モビリティ(電気自動車)

出所)国土交通省(2018)「第8回 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 参考資料集」p.27

次のメリットは、環境への好影響です。自動車による排気ガスの減少によって、都市の大気汚染や温室効果ガス排出が抑制されます。また、自家用車保有台数が減少するため、駐車場面積を減らすことができ、緑地などへの転用が可能になります。

さらに、地方での交通手段の確保というメリットもあります。自動運転車をサービスカーとして導入したり、データの活用によってバスを最適に運行させたりすることができれば、交通手段が少ない地域に住む「交通弱者」と呼ばれる人々の移動は非常に楽になるでしょう。

交通機関の効率化

既にMaaSのサービスが始まっているヘルシンキでの実証実験では、公共交通機関の利用増加とともに、運賃収入が増加したことが報告されています。*4
このような状況が実現すれば、公共交通機関に投入する税金などの公的資金額を低く抑えることができる可能性があります。

公共交通機関の運営効率が悪く、鉄道路線を維持することが難しい地域では、赤字の路線を廃止し、その分の運用・維持資金をAIオンデマンドバスや自動運転車に投資することで、より効率的な運営が可能になります。

AIオンデマンドバスとは、AIを活用して最適な配車をするサービスです。*5利用者が電話やスマホのアプリで予約すると、指定したバス停にバスがリアルタイムで配車されます。グリーンスローモビリティという「電動で、時速20km未満で公道を走る4人乗り以上のパブリックモビリティ」*3:p.25 も様々な用途での活用が検討されています(図3)。

図3 グリーンスローモビリティ

出所)国土交通省(2018)「第8回 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 参考資料集」p.25

また、ユニバーサルデザインの観点から、障がいを抱える人々が特別な連絡をしなくてもよりスムーズな移動ができるようになる交通システムの構築も期待されています(図4)。
*6:p.6

図4 障がい者がMaaSによって、特別な連絡をしなくても支援が受けられる構想

出所)国土交通省(2021)「ユニバーサル社会におけるMaaSの活用方策について」p.6

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MaaSの事例

MaaSの導入状況

MaaSは現在どの程度、導入されているのでしょうか(図5)。

図5 MaaSの導入状況

出所)国土交通省(2018)「第8回 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 参考資料集」p.20

図5のように、現在MaaSは、欧米の都市を中心に既に実現しています。日本はそうした動きにやや遅れをとっていますが、現在、その構築に向けて、多くの実証実験が行われています。*3:p.21-33、*7:p.7

図6 国が進める各地のMaaS実証実験

出所)国土交通省(2019)「MaaSの普及に向けた課題等について」p.7

上の図は、国がすすめる実証実験ですが、民間企業は既にMaaS実現に向けた独自の計画を推進しています。*4

MaaS先進都市ヘルシンキの取り組み

世界で初めて実用化したMaaSは、ヘルシンキのベンチャー企業が2016年末に、ヘルシンキ市周辺エリアを対象に提供を始めたサービス「Whim(ウィム)」です。*7:p.2

Whimには、3つの料金プランがあり、利用者が自分に合ったものを選択することができます(図7)。

図7  Whimが提供する3つの料金プラン

出所)国土交通省(2019)「MaaSの普及に向けた課題等について」p.2

利用者は、毎月62ユーロ(1ユーロを130円で換算して、約8,000円)か毎月499ユーロ(同約65,000円)の定額制、あるいは1回ごとの料金プランのどれかを選択します。
それによってポイントが付与され、Whimが提示するいくつかの交通経路から最適なものを選択すれば、予約、乗車、決済までを一括して利用することができます。*4、*7:p.2

Whimが提示する交通手段は、電車やバスなどの交通機関のほか、民間タクシーやバイクシェア、個人の徒歩や自転車などです。*4指定した交通手段は、スマホのアプリ画面を提示するだけで利用できます

先ほども少し触れましたが、このサービスによって、公共交通機関の利用が大幅に増加しました。サービス開始前には公共交通の利用が48%、自家用車が40%、自転車が9%でしたが、サービス開始後は、公共交通が74%と大幅に増加した一方で、自家用車の利用は20%にまで減少しました。

このような取り組みを支援しているのは、産官学コンソーシアムであるITSフィンランドと、フィンランド運輸通信省です。ITSフィンランドは主要大学、タクシー協会、民間企業など100以上の団体・組織が参画し、それまで個別に点在していた移動に関する情報検索や決済などのサービス統合を進めました。またMaaSのために、法整備を実施し、それまでバス、タクシー、鉄道など種類別に存在していた輸送サービスに関する法律が一元化されています。

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日本版MaaSの実現に向けて

MaaS実現のための課題

最後に、日本でMaaSを実現させるために、解決しなければならない課題についてみていきましょう(図8)。

図8 日本版MaaSの実現に向けて取り組むべきこと

出所)国土交通省(2019)「MaaSの普及に向けた課題等について」p.4

この図は、日本版MaaSの実現に向けて取り組むべきことを整理したものです。
大きく分けて、以下のような課題が挙げられています。

  • 事業者間のデータ連携
  • 運賃・料金の柔軟化、キャッシュレス化
  • まちづくり・インフラ整備との連携
  • 新型輸送サービスの推進
  • その他

いずれも、法整備・制度整備を含めた交通システム全体の見直しと連携が必要です。
また、交通事情には地域差があるため、「大都市」「大都市近郊」「地方都市」「地方郊外・過疎地」「観光地」の類型ごとに推進する必要があります。

そのために、先ほどみたフィンランド同様、日本も産官学が連携してMaaS実現のための取り組みを続けています。*4

おわりに

これまでみてきたように、MaaSは現在の交通システムの常識を覆し、私たちの生活を驚異的に便利なものにします。また、個人の生活だけでなく、都市や地域にも画期的な変化をもたらし、さまざまな社会問題の解決策としても、大きな役割を果たすことが期待されています。

もうすぐそこにまで来ているMaaSの実現。
今後の展開に注目しましょう。

*1 出所)国土交通省「PERSPECTIVE MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス) について

*2 出所)MaaS Alliance(2017)「 White Paper

*3 参考・出所)国土交通省(2018)「第8回 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 参考資料集

*4 参考)総務省「次世代の交通 MaaS

*5 参考)国土交通省「日本版MaaSの実現>基盤整備の推進

*6 出所)国土交通省(2021)「ユニバーサル社会におけるMaaSの活用方策について

*7 出所)国土交通省(2019)「MaaSの普及に向けた課題等について

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