株式投資を行うにあたって、自分で銘柄選定をする場合、まずは候補となる銘柄について、その株価を分析・評価することになります。
ただ、ひとことで株価を分析すると言っても、様々な手法があり、まずはどのようなアプローチで株価分析を考えるかを知ることが大切です。
そこで今回は、これから株式投資に取り組んでみたい、株式のことをもっと勉強してみたいとお考えのみなさんに向けて、株価分析の方法について基本的なところを解説してみたいと思います。
株価分析を行う際の2つのアプローチ
株価を分析する方法は、大きく以下の2つに分類できます。
- ファンダメンタルズ分析
- テクニカル分析
ファンダメンタルズ分析とは、企業の財務状況や業績といったデータを基に、企業が持つ本質的な価値を分析していく方法です。
その会社の価値に対して割安に評価されている、あるいは今後の成長が見込める銘柄を探し出して、実力に見合った株価になるのを待つというのが、この分析による投資のスタンスです。これに対してテクニカル分析とは、株価や出来高の過去の推移から一定の法則性を見出して、その法則性から今後の株価を分析していく方法です。
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析は、アプローチが違うだけでどちらかが優れているというものではありません。
例えば、ファンダメンタルズ分析で実力のある企業を見極めて、テクニカル分析でより良い購入タイミングを見つけるといった形で、両方の観点から分析を行うのが一つの考え方と言えるでしょう。
(目次へ戻る)
ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタル分析では、企業のデータを分析してその価値を評価していきますが、押さえておきたい基本的な方法をいくつか紹介していきます。
なお、分析の基となるデータについては、公表されている財務諸表、上場企業の情報をまとめている四季報などから、誰でも入手可能です。
こういった情報は多くの証券会社が口座開設者向けに無料で提供している場合もありますので、しっかり有効活用するようにしましょう。
5つの代表的な指標
一般に公表されているデータからでも、企業や株価に関する分析に役立つ様々な指標を算出することができます。
ここでは財務指標と株価指標の2つに分類した上で、それぞれ代表的なものをいくつか紹介していきます。
財務指標
財務指標とは、企業の財務諸表などのデータを分析して、財務状況や収益性を評価する際に使用されるツールです。
自己資本利益率(ROE)
計算式:当期純利益÷自己資本×100(%)
自己資本に対する利益の割合を示す値で、企業が利益を生み出す総合的な力を評価することができます。
この値が高いほど良い評価になりますが、2018年における日本の上場企業の平均は9.4%*1となっています。
売上高成長率
計算式:(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100(%)
売上高が前年と比較して伸びた割合を示す値で、企業の成長性や事業の拡大ペースを読み取ることができます。
この値が高いほど大きく成長していることになり、将来の利益拡大が期待されます。
流動比率
計算式:流動資産÷流動負債×100(%)
1年以内に支払う必要のある負債に対する、1年以内に現金化できる資産の割合で、企業の安全性を評価する際に使われる指標です。
この値が100%以下になっている場合には、企業がキャッシュ不足に陥るリスクを意識する必要があります。
株価指標
株価指標とは、株価水準が適正かを評価するための指標です。
企業に関する様々なデータと株価を比較することで、株価が高すぎないか、低すぎないかを見極めていきます。
株価収益率(PER)
計算式:株価÷1株当たり当期純利益
会社が1年間で生み出す利益に対して、株価が何倍になっているかを示す値です。
この値が高いと株価が割高で、低いと割安ということになります。
なお、2020年12月の東証一部上場企業の業種別のPER(単純平均)は、以下の表の通りです。
出所)日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」に基づき三菱UFJ国際投信作成
株価純資産倍率(PBR)
計算式:株価÷1株当たり純資産
純資産に対して株価が何倍になっているかを示す値です。
PERと同様に、この値が高いと株価が割高で、低いと割安ということになります。
2020年12月時点での東証一部上場企業の業種別のPBR(単純平均)は、以下のとおりです。
出所)日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」に基づき三菱UFJ国際投信作成
ファンダメンタルズ分析の注意点
ファンダメンタルズ分析は企業の本質的な価値に見合った株価を把握しようとする方法で、ある意味で堅実な投資のやり方と言えるかもしれません。
しかし、そのようなファンダメンタルズ分析でもいくつか注意しておくべきポイントがあります。
まず、ファンダメンタルズ分析では企業が発表している予想数値に基づいて行うことが多いのですが、この予想数値は必ずしも実現されるとは限りません。
つまり、分析するデータに推測の要素が含まれているため、必ずしも分析によって行った評価どおりになるとは限りません。
さらに、ファンダメンタルズ分析で行った評価が正確であったとしても、予想外の事態が発生して企業の価値が下がってしまうことも考えられます。
例えば、順調に業績が推移していた企業に不正が発覚するなどして、突然業績が傾くこともあるでしょう。
このように、ファンダメンタルズ分析は効果的な分析方法ではありますが、様々な変動要素を含む評価・分析手法であるということも、頭に入れておく必要があるでしょう。
(目次へ戻る)
テクニカル分析
テクニカル分析では過去の株価や出来高の推移に基づいて分析を行いますが、過去の株価や出来高の推移はチャートという形で、視覚的に確認するのが基本です。
ここでは、この株価チャートの読み方の基本から解説していきたいと思います。
株価チャートの読み方
上図は株価チャートのサンプルです。横軸が時間になっており、縦軸は株価や出来高の数値になっています。株式チャートを見た際の中心の少し特殊な形のグラフはローソク足というもので、株価を示しています。一方、チャートの下部の棒グラフが示しているのは出来高です。以下では、ローソク足について簡単に説明します。
出所)各種資料より三菱UFJ国際投信作成
ローソク足を拡大すると上図のようにローソクのような形をしており、例えば1日や1時間というように一定期間内における値動きを以下の4つの値(四本値)で表現しています。
出所)各種資料より三菱UFJ国際投信作成
ローソク足には陽線と陰線の2種類がありますが、一定期間内で値上がりした場合(始値<終値)が陽線、一定期間内で値下がりした場合(始値>終値)が陰線となります。一般的に、陽線は白、陰線は黒と、見分けられるように異なる色が使われます。
なお、ローソク足は始値と終値の間の太いところは「実体」、実体から上下に伸びているところが「上ヒゲ」「下ヒゲ」と呼ばれます。
このローソク足を横に並べていくことで、過去の長期間にわたる株価の推移を一目で読み取れるようになっているわけです。
テクニカル分析の注意点
テクニカル分析を行って相場の上下動で利益をあげようとして、短期的な取引を繰り返そうとする方もいますが、この短期的な取引はうまくいくとは限らず、失敗が積み重なると大きな損失になってしまう可能性がありますので、注意する必要があります。
テクニカル分析には正解があるわけではなく、「こうすれば確実に利益があげられる」という決まったやり方はありません。また、ある相場で一時的に成功した分析方法が、別の相場でも通用するというわけではありませんので、特定の手法を覚えるだけで安定的に利益があげられるようになる、というような簡単な話ではないことは、しっかり理解しておく必要があるでしょう。
(目次へ戻る)
投資信託という選択肢も
ここまでファンダメンタルズ分析とテクニカル分析について紹介してきましたが、これはあくまで基本的な手法であり、多岐に亘る分析手法の一部にすぎません。時間をかけてしっかりと研究し、株価分析に関する知識とスキルを積み上げる必要があることは、よく理解しておいた方がいいでしょう。
もし「株式投資に興味はあるものの、そこまで時間がかけられない」というのであれば、投資信託というのも1つの選択肢です。投資信託では、自分に合った投資方針の商品を選べば、それに基づいて運用のプロが細かい銘柄選択などを代わりに行ってくれます。
ご自身で銘柄選択をして株式投資をするのか、あるいは投資信託を活用するのか、ご自身のライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
ゆとりのある将来のために、無理のない範囲で資産運用を始めましょう。
*1 出所)経済産業省「事務局説明資料(2019年11月)」p.7
・投資信託のリスクと費用については、こちらをご確認ください。
・当ページは当社が作成した情報提供資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。投資信託をご購入の場合は、最新の投資信託説明書(交付目論見書)および目論見書補完書面の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
三菱UFJ国際投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員