リノベーションにかかる費用は?賃貸とどっちがお得?戸建て・マンション別に比較してみよう

リノベーションにかかる費用は?賃貸とどっちがお得?戸建て・マンション別に比較してみよう

日本は今、本格的な「ストック型社会」を迎えようとしています。
住宅関連市場の将来動向は、これまでの新築主体から既築ストックの有効活用が求められる時代へと変わりつつあります。*1

それに伴い既存住宅に大規模な工事を行うことで、住まいの性能を新築の状態よりも向上させ、あるいは価値を高める「リノベーション」が注目されるようになりました。
リノベーションによってデザイン性の高い空間に改良し、また間取りや内外装などを現代の住環境に合わせた仕様に変更するなど、快適な住環境をつくりだすのです。

そこで今回は、ライフスタイルに合わせて自由にアレンジできる「リノベーション」について詳しく解説をしていきます。

リノベーションとは

まずは、リノベーションの定義やリフォームとの違い、既存住宅の流通シェアについて見ていきます。

(1)中古住宅を快適な住まいに再生すること

リノベーションとは、中古住宅に対して「新たな機能や価値を付け加える」ための改修工事を施工することを意味します。
その家で暮らすために必要とされる包括的な改修を行うので、構造躯体や水回りの配管を刷新するなど大掛かりな工事になることもあります。

例えば、間仕切りを広くして光と風が通りやすい広々としたリビングをつくる、キッチンをより機能性の高い最新機器に変更するなど、快適な暮らしができるように現代的な住居に再生します。

図1 引用)リノベーション協議会「リノベーションとは

(2)リフォームとの違い

「リノベーション」は、新築時の性能よりも「付加価値」を付けて復元する工事ですが、「リフォーム」は壊れたり古くなったりした住まいを元の状態に戻す工事といえます。

例えば、古くなったトイレを新しいものに取り換える、汚れた壁紙を貼り替える等があげられます。

部分的・表層的な改修工事にあたり、劣化した住まいを新築当時の状態に原状回復するのが目的です。
いわば、マイナス状態のものをゼロの状態に戻すための回復工事といえます。

どちらかが優れているというものではなく、住む人にとって経済的にも使い勝手においても快適であるかどうかが重要な点です。*2

(3)既存住宅の流通シェアは増加傾向

近年、国土交通省では中古住宅・リフォーム市場の健全な発展を目指し、消費者の住生活に関するニーズに的確に対応できる環境の整備に取り組んでいます。

図2は既存住宅の流通シェアの推移を表したグラフです。
参照すると、全住宅流通量に占める既存住宅の流通シェアは、平成24~30年まで約14%前後。ほぼ、横ばい状態となっています。

日本では既存住宅より新築住宅の方が圧倒的に流通しており、欧米諸国と比べると6分の1~5分の1程度と低い水準であるのが特徴的です。

なおアメリカでは、既存住宅が81%の割合で流通しています。*3

図2 引用)内閣府・国土交通省「既存住宅市場の活性化について」P1

また、平成5年以降、持家として取得した中古住宅数を比較すると、戸建の方がマンションなどの共同建より若干、多くなっています。(図3)

住宅流通量は、一戸建・長屋建が平成5年から平成30年の間で9.9万戸から8.1万戸で18%減少しました。
共同建は6.8万戸から7.9万戸と16%増加しています。

図3 引用)内閣府・国土交通省「既存住宅市場の活性化について」P8

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リノベーションを選んだ人の理由

新築ではなく、あえて中古住宅を購入してリノベーションをする人にはもちろん、理由があります。

ここでは、その理由を5つご紹介していきましょう。

(1)リーズナブルに購入できる

下図4は国土交通省が実施した住宅市場動向調査(賃貸も含む)の結果です。

実際に中古住宅を取得した人のアンケート回答では、「価格が適切だったから」が戸建てでは1位、マンションでは2位になっています。

住宅を購入する際には多額の資金が必要になりますが、同じ地域・広さの新築と比べると中古の方がリーズナブルです。

一般的にはリノベーションの費用をかけても新築より、リーズナブルに住まいを取得できます。

図4 引用)国土交通省「平成30年度 住宅市場動向調査~調査結果の概要~」P4

(2)立地条件が良い

住宅の立地条件は中古マンションを購入した理由の1位で、戸建てにおいても3位に入っています。(図4)

このように中古住宅の魅力の一つとして、立地条件の良さは外せません。

人々が日常生活を不自由なく送れるかどうかは、立地によって左右されると言っても過言ではないからです。そのため、立地の選定には慎重になるといえます。

新築住宅では手が出せないエリアでも、中古住宅なら手が届く物件が探せることも影響しているでしょう。*4

(3)資産価値の目減りが少ない

リノベーションは新築に比べて資産価値の目減りが少なく、住み替えしやすいのが特徴です。

新築住宅は購入して15年もたつと価格が一気に下落してしまいますが、中古住宅は購入した後でも価格の下落は比較的ゆるやかといえます。

また、資産価値の目減りが少ないだけでなく、リノベーションをすることで、新たな価値が高まり、優良なストック住宅として次の世代に残すことも可能です。

図5 引用)リノベーション協議会「リノベーションとは

(4)自由に設計ができる

リノベーションは水回りの配置変更、間仕切りをなくして2部屋を1部屋にして広々とした空間にするなど自由に設計ができます

自宅で料理教室や食事会を開催する方はアイランドキッチンにするなど、人それぞれ、こだわりのある住まいにつくりかえることが可能です。

(5)地球環境に優しい

近年、政府では従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」というストック活用型の社会への転換を目指しています。

既存住宅を快適に住める状態に再生して、長期にわたり住み続けられるための補助事業なども積極的に展開しているところです。*5

まだ使えるものは使うため、地球環境にもやさしいといえます。

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購入・賃貸とのコスパ比較

住宅を購入した場合と賃貸で住み続けた場合、どちらがお得になるのかは長年議論されています。

ここでは、中古住宅を購入してリノベーションをした場合と、賃貸で住み続けた場合とのコストを比較していきましょう。

(1)購入の場合

中古住宅を購入した場合は新築よりリーズナブルに購入できますが、リノベーションまたはリフォームの費用がかかります。

a.中古住宅は新築よりリーズナブルに購入できる
下図6は、住宅支援機構がまとめた「住宅を購入した人の所要資金」のグラフです。

中古戸建は2,574万円ですが建売住宅は3,494万円と、中古住宅の方が約1,000万円安くなっています

中古マンションは3,110万円、新築マンションは4,521万円と、約1,400万円、価格に違いがあるのが特徴です。

図6 引用)住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」P9

b.リフォーム費用の相場
中古住宅を購入した場合にはリノベーションやリフォームがつきものです。
ここでは、リフォーム部位別の費用相場を見ていきましょう。

図7 参考)三菱UFJ信託銀行株式会社「リフォームの相場ってどのくらい?水回りや寝室など場所別の費用をご紹介」を基に三菱UFJ国際投信作成

図8 参考)三菱UFJ信託銀行株式会社「リフォームの相場ってどのくらい?水回りや寝室など場所別の費用をご紹介」を基に三菱UFJ国際投信作成

(2)購入と賃貸との比較

住まいを持ち家にするか賃貸で住み続けるのかは、生涯かかる住居費にも影響を与えます。

ここでは、コスト比較とメリット・デメリットについて詳しく解説をしていきましょう。

a.購入の方が賃貸よりもコストは低い
下図9は、戸建て購入と賃貸の支払い総計比較表です。

比較すると初期費用は賃貸の方がかかりませんが、トータル的な住居費(住宅ローン関連または家賃)は賃貸の方が2.2倍ほど金額が高くなっています。

戸建購入は、居住後の税金等1,310万円を加算しても合計が6,180万円となり、賃貸の合計9,405万円ほどコストがかかりません。

したがって、コスト面では戸建て購入の方が低く抑えられています

図9 参考)アップユ―「対決!持ち家vs賃貸どっちがお得?生涯コストで徹底比較」を基に三菱UFJ国際投信作成

b.それぞれメリット・デメリットはある
持ち家の方がトータル的にコストが押さえられる傾向にあり、また最終的に資産になるという点ではメリットになるといえるでしょう。人に貸して家賃収入を得ることも可能です。
また、好きなようにリフォームもできます。

しかし、「売りたくても売れない場合がある」「建物の修理は自分持ち」「固定資産税などの支払いがある」「気軽に住み替えができない」といった点は、デメリットとも言えるでしょう。

賃貸のメリットは、建物の付帯設備などの経年劣化による修理費は払う必要がなく、固定資産税などの税金の支払いも必要ありません

また、仕事や生活のスタイルに合わせて気軽に新しい住まい(賃貸物件)にも移れます。

デメリットは家賃が毎月発生することや、年を取ると入居条件が厳しくなることです。また、所有者ではないためリフォームには大きく制限がかかります。*6

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まとめ

今回は、近年のリノベーションに関する状況や、リノベーション住宅を選んだ人の理由などについて詳しく解説をしていきました。

現代では人々が多様な価値観を持ち、自分のライフスタイルに合わせた住まいを選ぶ人が増えています。

住宅に対する価値観も人それぞれになりつつある現在、「リノベーション」という新しい住まい選びも選択肢の一つです。

ただ、リノベーション住宅を購入することは、よい面もあればそうでない面もあります。

自分の価値観やライフスタイルを考慮して、後悔のないように選んでいきましょう。

*1 参考)経済産業省「リフォームビジネス拡大に向けた勉強会 報告書概要」P1

*2 参考)科学技術振興機構「リフォームとリノベーションの事業分野の特性と展望」P52

*3 参考)内閣府・国土交通省「既存住宅市場の活性化について」P1

*4 参考)科学技術振興機構「リフォームとリノベーションの事業分野の特性と展望」P53

*5 参考)国土交通省「長期優良住宅のページ

*6 参考)アップユ―「対決!持ち家vs賃貸どっちがお得?生涯コストで徹底比較

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