クリーンテックは「グリーンテック」とも呼ばれ、太陽光発電や電気自動車など、資源と環境を保護するために作られる製品、サービス、やプロセスのことを指します。
世界中で温暖化や環境汚染の防止、資源の保護が急務になっていることを背景に、近年こうしたクリーンテック産業への投資が活発になっています。
その規模は2027年までには現在の5.5倍にのぼるとの予測もあり、ベンチャーキャピタル業界から再び注目されはじめています。
クリーンテック(グリーンテック)市場は急拡大
ひとくちに再生エネルギーの利用、環境への配慮といっても、産業としては幅広い分野にわたります。
具体的には、エネルギー、資源、交通、農業、IoTなどのテクノロジー、素材・化学工業が挙げられます。
市場調査会社Allied Market Researchのレポートによると、世界のクリーンテックの市場規模は2019年に87億9000万ドル(約9581億円)と評価され、2027年までには483億6000万ドル(約5兆2712億円)に達すると予測されています*1。約5.5倍です。
世界的なSDGsへの関心も背景にはありますが、クリーンテック市場の成長を後押しする大きな要因としては、パリ協定があります。参加各国は2030年、2050年の削減目標を提出しており、技術の総動員や経済システムの変革が求められているのです(図1)。
図1:主要国の2030年中期目標と2050年長期目標
出所)外務省「気候変動に関する最近の動向」p6,2021年3月
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クリーンテックとベンチャーキャピタル
クリーンテックへの投資は、過去にもブームを巻き起こしたことがありました。2000年代前半から2010年あたりまでのことで、電気自動車のテスラはこのブームの中で成功した企業と言えます(図2)。
図2:ベンチャーキャピタルのクリーンテック投資のピーク
出所)MIT Energy Initiative「Venture Capital and Cleantech:The Wrong Model for Clean Energy Innovation」p3
ただ当時は、多額の資本金を必要とする一方で技術開発に時間がかかるというクリーンテックへの投資は、ベンチャーキャピタルにはなじまないという評価が下されました。
しかし再び、ベンチャーキャピタルの注目がクリーンテックに集まりつつあります。エネルギー分野だけを見ても大きな伸びを示しています(図3)。
図3:ベンチャーキャピタルの投資額推移
出所)経済産業省「事務局説明資料(革新的環境イノベーションへのファイナンス)」p14
前回のブームから10年ほどが経って技術開発のスピードが上がったことや、パリ協定などを背景に確実な需要が見込めるようになってきたことが理由だと考えられます。
著名資産家の参加も活発です。
例えばビル・ゲイツ氏や米Amazonのジェフ・ベゾス氏などの著名人が参加して設立した環境問題対策のためのファンドは、クリーンテック企業約40社に投資していることを公表しています*2 *3。
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注目される「Global Cleantech 100」
またクリーンテックに関し、世界で幅広くコンサルティング活動を展開するCleantech Groupは、世界で環境問題解決に大きなインパクトを与えそうな企業のトップ100を選定した「Global Cleantech 100」というレポートを毎年公表しています。
2021年のGlobal Cleantech 100企業は北米から62社、ヨーロッパ・イスラエルから33社、アジア太平洋地域からは5社となっています*4。
分野別で見ると、
- エネルギー、電力:39社
- 資源、環境:19社
- 交通、ロジスティクス:15社
- 農業:13社
- システム関連:7社
- 素材、化学:7社
となっていますが、これら企業への投資額を見ると下のようになっています(図4)。
図4:Global Cleantech 100 分野別投資額
出所)Cleantech Group「GLOBALCLEANTECH100」p11
エネルギー、電力だけでなく、農業分野でも関心が高まっていることがわかります。
なお、Global Cleantech 100の企業への投資額は創業時に比べ、合計で590億ドル近く増加していると計算されています*5。
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まとめ〜個人投資家の意欲もクリーンテックへ
そして、個人投資家の間でも環境への取り組みに積極的な企業を選びたいという意識が高まっています(図5)。
図5:投資意欲が高まるのはどのようなことに取り組んでいる企業か
出所)経済産業省「事務局説明資料(革新的環境イノベーションへのファイナンス)」p19
投資意欲が高まる企業の特徴として、「再生可能エネルギーの利用」「環境問題の解決」「持続可能な開発目標(SDGs)」といった項目が挙がっています。
再生可能エネルギー、省エネ、蓄電、水処理、持続可能な農業、新たな資源の発見や資源のリサイクル、そのためのIoTやプラットフォームなど広い分野にわたるクリーンテックですが、金融資産としてだけでなく、環境問題解決への投資という形でも再びブームになりつつあるようです。
(※為替レート:2021年5月7日現在)
*1 出所)Allied Market Research「Green Technology and Sustainability Market Insights - 2027」
*2 出所)Breakthrough Energy「BEV Board & Investors」
*3 出所)Breakthrough Energy「The BEV Portfolio」
*4、*5、*6 出所)Cleantech Group「GLOBAL CLEANTECH 100」p10、p11、p12