株式取引を行う場合には、現在の株価の割高・割安を判断する目安を知っておきたいものです。割安・割高が分かれば、売買を行うタイミングの判断材料になるでしょう。
今回は、株価の割高・割安を見極める際に使用できる指標について、基本的なところから分かりやすく解説していきます。株価指標の限界も含めて理解して、株価を見る際の参考にしていただければと思います。
株価は「人気投票」で決まる
株式は、会社の所有者としての権利を均等に細分化したものです。そのため、株式を購入すると、大まかに言ってしまえば、購入した株数分だけその会社の権利を所有することになります。例えば、発行済み株式数が100万株の会社の株を100株購入すれば、その会社の1万分の1の権利を所有することになります。
このような意味を持つ株式ですが、一般投資家が取引を行う上場株式は、証券市場における売買によって株価が決まります。将来にわたって大きな利益をあげると見込まれる会社の株式は人気が高まりやすく、株価も高くなる傾向があります。
しかし、あくまでも市場における取引価格は買いたい人と売りたい人の需給関係によって決まり、必ずしも価値に対して適正な水準になるとは限りません。業績が悪くなると予想されている会社の株価が上がることもあれば、逆に業績が良くなると予想されている会社の株価が下がるということもよく起こります。
「株価は人気投票」と言われることがありますが、人気と実力が常に一致するわけではありません。人気投票だからこそ、適正な株価からかけ離れて割安・割高になる銘柄も出てくることになります。
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3つの株価指標を紹介
株価の割安・割高が分かれば、株式取引を有利に進めることが可能になります。ここでは、それを判断する上で参考となる指標について、以下の3つを紹介します。
- PER(株価収益率)
- PBR(株価純資産倍率)
- 理論株価
では、それぞれの指標について説明していきます。先ほど説明した株式の考え方を踏まえながら、指標の持つ意味合いを理解していただければと思います。
PER
PERは、以下の計算式で算出される指標です。
PER = 株価÷1株当たり純利益(EPS)
EPSとは、会社があげる利益のうち株式1株分に割り当てられる部分のことです。
計算式の通り、PERは株価がこのEPSの何倍になっているかを示したものなので、仮に同じ業績が続くとすれば、PERの値分の年数で元が取れると言うことができます。
株価が上がればPERは高くなり、株価が下がればPERは低くなります。
参考として、2012年から2020年にかけての上場企業の市場別PER(単純平均)の推移は以下の通りとなっています。概ね15倍前後で推移をしています。
出所)日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR 長期データ(総合)」を基に三菱UFJ国際投信作成
ただしこれは、単純にこの水準を上回っていれば割高、下回っていれば割安と判断すればいいわけではありません。2020年12月の東証一部上場企業の業種別のPER(単純平均)の表もご覧ください。
出所)日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR 2020年12月」を基に三菱UFJ国際投信作成
このように、業種によってかなりのバラツキがあることが分かります。
これには様々な理由がありますが、一つには、将来的な成長力への期待が影響しています。
今後ますます成長が見込まれる業種であれば高く評価され、成熟産業は安定している分、PERが低くなる傾向があります。
とはいえ、それも絶対ではありません。
割安・割高を単純にPERの値だけを根拠に機械的に判断すると、誤った答えを導いてしまう可能性があります。同業他社の水準やその会社の過去の推移なども考慮しながら、総合的に判断することが大切です。
PBR
PBRは、以下の計算式で算出される指標です。
PBR = 株価÷1株当たりの純資産(BPS)
純資産とは帳簿上の資産から負債を差し引いた金額のことで、会社の資産価値というイメージを持てばいいでしょう。BPSはその純資産を1株当たりの金額に換算したもので、PBRは株価がこのBPSの何倍になっているかを示した指標です。
株価が上がればPBRは高くなり、株価が下がればPBRは低くなります。
PBRの値が1倍であれば、株価が会社の資産価値と同じであり、1倍を下回っていれば会社の資産価値よりも株価が割安としてみることも可能です。
参考として、2020年12月の東証一部上場企業の業種別のPBR(単純平均)の表を見ておきましょう。
出所)日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR 2020年12月」を基に三菱UFJ国際投信作成
PERと同様ですが、PBRに関しても業種によってバラツキが大きいことが分かります。
単純に倍率だけで判断するのではなく、さまざまな要素から総合的に分析することが必要となります。
理論株価
理論株価とは、その銘柄のあるべき株価を理論的に計算した値のことです。「適正株価」「目標株価」といった表現をされることもあります。さまざまな計算方法がありますが、大まかには以下のような考え方をするのが基本です。
理論株価 = 現時点での資産価値+今後の利益に対する価値
PERは株価を利益面から分析しており、PBRは株価を資産面から分析してきましたが、理論株価ではこの両面からあるべき株価を算出していきます。ここでは計算方法の一例として、EPSとBPSを使用した計算方法を紹介しておきます。
理論株価 = BPS+EPS×10
この計算式では、現時点での資産価値に10年分の利益を加えたものがあるべき株価と仮定しています。
非常に簡便化された計算方法で使いやすいですが、あくまで目安の一つでしかない点には注意してください。
なお、より複雑な計算を行うものもありますが、上記の計算式と同様に、必ず計算の前提として仮定が置かれることになります。
特に「会社が将来どれだけの利益をあげるのか?」という部分は推測の余地が大きく、理論株価の精度はその正確性に左右される側面があります。
理論株価を目にすることは多々ありますが、計算方法が統一されているわけではありません。
どのような仮定で計算されているのか、その仮定が現実的なものなのかについて、しっかり意識して利用することが大切です。
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株価指標の限界
3つの株価指標を紹介してきましたが、それぞれ分析において有効な数値ではあるものの限界もあります。
例えば、当期のEPSから導き出したPERや当期末のBPSから導き出したPBRは、あくまでも過去の事業活動の結果として確定した数字から、株価の水準を見ています。
しかし、株式の価値として大切なのは、あくまでも将来獲得する利益です。もちろん過去の業績は将来につながる部分もありますが、それだけでは限界があります。
また、来期の予想EPSを使用してPERを算出することもできますが、推測の要素が大きく入っており、かつ、その予想EPSが来期以降にわたって継続的に続くとは限りません。
理論株価も同様で、推測や仮定の要素が入っているため、やはり限界があります。
このように、株価の割安・割高を判断するには、株価指標を使用して分析することももちろん大切ですが、それに加えて、会社の将来の業績について深い洞察を持っておくことが大きな武器になるわけです。
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プロの分析を利用するには
今回は、株価の割安・割高を見極める際に参考となる株価指標を紹介してきました。これらの株価指標の意味合いをしっかり理解して、その限界も意識しながら利用していただければと思います。
割安な株式を購入して、割高になったら売却するということを繰り返すことができれば良いですが、割安・割高の判断には深い知見や高度な分析が要求されるため、一般投資家にとっては難しい側面もあります。
この点、例えば、投資信託の場合、運用のプロが高度な分析を代わりに行った上で資金を運用してくれます。その分、信託報酬という運用にかかる手数料等が発生する場合があります。専門知識と時間があまりなく、株式への投資を検討している方にとって、一つの手段と言えるかもしれません。
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三菱UFJ国際投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員