お金があればあるほどQOLは上がる?目的を明確に無理のない資産形成を

お金があればあるほどQOLは上がる?目的を明確に無理のない資産形成を

QOL(Quality of Life)とは、私たちが生きていくうえでの生活に対する満足度を表す指標です。

長期的な視点でQOLを向上させるためには、資産形成は大きな意味を持ちます。
しかし、いたずらにお金を貯め込もうとすることが、QOLの向上に繋がるとは限りません。

今回は、QOLを高めることを人生の目的と位置づけたうえで、資産形成について考えてみようと思います。

お金とQOLは比例する?

出所)「満足度・生活の質に関する調査」に関する第4次報告書~生活満足度・暮らしのレポート~|内閣府政策統括官(経済社会システム担当)p9

上記のグラフは、2019年(約10,000サンプル)および2020年(約5,000サンプル)に行われた、内閣府による生活の満足度調査において、収入や資産と生活の満足度がどのように相関しているかを表したものです。

このグラフによると、世帯別年収では「2,000万円以上3,000万円未満」のレンジで総合主観満足度が頭打ちとなり、「1億円以上」のレンジになると、むしろ大きく下がっています。
また、金融資産残高別では、「1億円以上3億円未満」のレンジまでは総合主観満足度が少しずつ増えていますが、「3億円以上」のレンジではやはり下がっていることがわかります。

こうしたデータからは、高いQOLを実現するにはある程度お金が必要であるものの、「お金があればあるほど幸福である」という仮説は間違いなのではないか、と推測することができます。

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ワークライフバランスがQOLに与える影響

お金以外にQOLに対して影響を与える要素として、「ワークライフバランス」はその代表例といえるでしょう。
ワークライフバランスは、QOLに対してどのような影響を与えているのか、内閣府の公表資料から読み取ってみたいと思います。

労働時間は短いほどQOLが高い?

出所)「満足度・生活の質に関する調査」に関する第4次報告書~生活満足度・暮らしのレポート~|内閣府政策統括官(経済社会システム担当)p28

上記のグラフは、前記の2020年調査の結果をもとに、労働時間と生活の満足度の相関性を示したものとなっています。

同グラフによると、「労働時間が短ければ短いほど、生活の満足度が高い」という傾向が見て取れます。
一般的には、長く労働すればするほどお金を稼げる傾向にありますが、このデータからは、長時間労働によってお金を稼いでも、必ずしもQOLには繋がらない可能性が高いことが推測されるでしょう。

労働時間は「ちょうどよさ」も大切

ただし、労働時間と生活満足度の関係性については、以下のようなデータも存在します。

出所)「満足度・生活の質に関する調査」に関する第4次報告書~生活満足度・暮らしのレポート~|内閣府政策統括官(経済社会システム担当)p29

上記のグラフは、自身の労働時間を「どのように感じているか」ということと、生活満足度の間の相関性を示しています。
このグラフからは、「働きたいだけ働く」ことができている人の生活満足度が高いことが読み取れます。

労働することは「トレードオフ」であることを意識すべき

時給制のような考え方をとるならば、「働けば働くほど収入や資産が増える」ことになります。
たしかに会社勤めの方であれば残業代が増えますし、自営業などの方であれば、積極的に仕事を獲得することで売り上げアップに繋がるでしょう。

しかし、仮にこれが正しいとしても、長い時間労働をするということは、それだけ自由な時間や家族との時間などを犠牲にすることを意味します。
また、長時間労働が常態化すると、心身ともに健康を害してしまう可能性もあるでしょう。

このように労働は、収入や資産というプラスの要素を得ることと引き換えに、ご自身のQOLを高めるかもしれない他の要素を手放す「トレードオフ」の行為であることを意識する必要があります。

前記の調査において、労働時間が「ちょうどよい」と回答した人の生活満足度が高い傾向にあるのも、こうした人々は労働に関する「トレードオフ」のバランスが良いからであると推測できます。

がむしゃらに長時間労働をしてお金を稼ぐのも一つの生き方ですが、労働時間を削減して日常生活に空き時間を作り、その時間を有効に活用するという発想の方が、QOLの向上に繋がるかもしれません。
このように、QOLを追求するには、常に複眼的な視点で物事を捉え、「自分にとって何が幸福か」ということを突き詰めて考えるとよいでしょう。

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QOLを追求する観点からの資産形成のあり方

QOLを高めることを人生の目的とするならば、資産形成も結局のところ、QOL向上のための手段に過ぎません。
このような観点から、資産形成を行う際には、以下の点に留意するとよいでしょう。

金額ではなく「幸せの総量」で資産を考える

すでにご紹介したデータが示すように、「収入や資産が多ければ多いほど幸福である」という図式は、必ずしも常に成り立つものではありません。

長時間労働を行ったり、ハイリスクな資産運用をしたりして資産を増やそうという欲求が出てきたときは、「資産を増やすことで、自分はどのくらい幸せになるのか?」と自問自答してみましょう。
その際、
「増えた資産で何を買うか」
「誰のために資産を使うか」
「どのくらい資産が必要か」
などと具体的にイメージを膨らませると、ご自身にとっての資産と幸せの関係性がわかりやすくなるかと思います。

中長期的な目標金額を定める

資産と幸せの関係性について真摯に考えることで、ご自身にとって中長期的にどのくらいの資産が必要なのかがわかってくるでしょう。

たとえば結婚をするタイミング、子どもが受験をするタイミング、マイホームを購入するタイミング、子どもが自立するタイミング……など、重要なイベント毎にマイルストーン(中間目標)を置いて、計画的に資産形成の目標を立てることをお勧めします。

そうすれば、目標達成のために
「どのくらい働けばよいか」
「どのような方法で資産運用をすればよいか(利回りなど)」
といったことが見えてくるので、それらに従って資産形成に向けた具体的な行動をとりましょう。

リスクの高い無理な資産運用はしない

レバレッジ取引や一部のデリバティブ取引に代表されるように、ハイリスクな資産運用によって急速な資産形成を目指そうとする方も、しばしば見受けられます。

しかし、「QOLを高める」という観点からしっかりと中長期的な資産形成の計画を立てれば、多くの場合、このようなハイリスクの資産運用に手を出す必要はないことがわかるかと思います。

行動経済学や行動心理学でよく言われるように、人間は「得る喜び」よりも「失う痛み」を重大なものとして評価する傾向があるため、ハイリスクな資産運用は、QOLを基準とすればいわば「期待値マイナス」の取引であるかもしれません

ハイリスクな資産運用を行う誘惑に駆られた場合、一度時間を置いて、ご自身にとっての「資産と幸せの関係性」を見つめ直してみてください。

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まとめ

お金を得るには苦労を伴うことが多い現実がある中で、QOLを最大限高めるためには、無理のない資産形成を行うことが大切です。

ご自身の働き方や、資産運用の方法を考えるに当たっては、収入や資産の金額そのものだけを重視するのではなく、それらを「幸せ」「QOL」に換算してみるという複眼的な視点をぜひお持ちください。

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