ポイント
平均寿命が延びて老後の期間が長くなることで、老後の生活資金を確保することがこれまで以上に重要な課題になっています。
こうした事情を背景に資産運用に対する関心は高まっており、若年層においても投資を通じて資産形成に取り組む人が増えています。しかし、定年を迎えるなど現役生活を退いた後の資産運用の方法について考えている方は、意外と少ないのではないでしょうか。
老後の資産運用は若年層とは目的が異なるため、考え方を見直し、取り組み方を工夫する必要があります。
今回は、老後の資産運用で大切な資産を守るためのポイントと注意点を説明します。
お金を増やすことより「守ること」を意識する
資産運用をするからには、少しでもお金を増やしたいと考えるのではないでしょうか。
しかし、老後の資産運用では、お金を増やすことより「守ること」「大きく減らさないこと」を意識することが大切です。
若年層の場合、一時的に資産が大きく目減りすることがあっても、定期的な勤労収入があるので普段の生活は維持できます。
また、老後を迎えるまでに時間があるので、一時的な市場価格の変動があっても長期で資産形成に取り組めます。
しかし、公的年金のみまたは勤労収入が少ない高齢世帯は、運用によって将来のために蓄えた資産が大きく目減りすると、その後の生活資金が不足する恐れがあります。
特に資産を取り崩して生活費を捻出している場合は、たちまち生活に支障が出てしまうかもしれません。
老後の資産運用は、若年層のときとは考え方を変える必要があります。
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退職金の使い方や運用について検討しておく
勤務先から退職金の支給が見込まれる場合は、退職金の使い方や運用について検討しておくことが大切です。
まとまったお金が入ってくる機会は少ないので、退職金を楽しみにしている方は多いでしょう。
しかし、退職金が入ってくると気持ちが大きくなり、旅行や趣味などで使いすぎてしまうかもしれません。
退職金を旅行や趣味に使うこと自体は問題ありませんが、あらかじめ予算を決めておき、計画的に使う必要があります。
また、退職金を資産運用に回すことを検討している方も多いのではないでしょうか。
退職金をすべて元本割れリスクのある投資商品に回すと、値動きによっては想定以上に資産を減らすことになりかねません。
退職金を運用する場合は無理をせず、仮に元本を割るようなことがあっても、当面の生活に支障がないと考えられるような金額にとどめておくことが大切です。
住宅ローンが残っている場合は、ローン返済も考えるのも一つの方法です。
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老後の資産運用も「長期・分散・積立」が基本
子育てが終わったタイミングなどや定年前後に資産運用を検討する方もいるでしょう。
「今から始めるのは遅い」と思うかもしれませんが、平均寿命が長くなったことによって定年後の期間が20~30年続くとすると、定年前後から資産運用を始めても遅くはありません。
老後の資産運用においても、若年層の資産運用と同じく「長期・分散・積立」が基本となります。
投資する地域や資産を分散して積立投資を長期間続けると、結果的に元本割れする可能性が低くなる傾向にあります。*1
また、将来インフレ(物価上昇)になるようなことがあれば、貨幣価値が相対的に下がってしまうため預貯金だけでは資産が目減りするリスクもあります。
老後を迎えてからも、当面の生活資金や十分な余裕資金を確保したうえで、しばらく使う予定がない資金の範囲内で資産運用に取り組むことを検討しましょう。
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老後の資産運用ではどんな金融商品を選ぶ?
老後の資産運用では、金融商品選びも重要なポイントになります。
「資産運用」「投資」という言葉を聞いたときに、「株式投資(個別株)」をイメージする方は多いのではないでしょうか。
株式投資はうまくいけば利益を得られますが、購入する銘柄を選んだり、その取引のタイミングを見極めたりするのが難しいかもしれません。
また、一般的には、投資資金に限りがあるため、複数の個別株への投資によって分散投資を目指すことは難しいと思われます。
少額から分散投資に取り組むなら、投資信託を検討してみてはいかがでしょうか。
投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの資金としてまとめ、資産運用のプロであるファンドマネージャーが「株式」「債券」「不動産」等に投資、運用する金融商品です。
運用をプロに任せられるので、時間や手間がかからないのが特徴です。
国も「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」といった税優遇制度を導入して、投資信託などを活用した資産形成を支援しています。
投資信託はさまざまな種類がありますが、老後の資産運用では「インデックスファンド」が一つの選択肢になるでしょう。
インデックスファンドとは、特定の市場全体の値動きを表す指数(日経平均株価など)に連動する投資成果を目指して運用される投資信託です。
インデックスファンドは仕組みがシンプルで、投資成果がわかりやすいのが特徴です。
たとえば、日経平均株価のインデックスファンドであれば、日経平均株価が上昇すれば、ファンドの基準価額も同じように上昇します。
また、販売手数料が無料(ノーロード)のファンドが多く、信託報酬も比較的低いので、長期保有に向いています。
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資産配分を見直してリスクを下げる
若いときから継続して資産運用に取り組んできた場合は、老後を迎えてから資産を大きく減らすことがないように、資産配分を見直してリスクを下げることを考えてみましょう。
年齢とともに資産全体に占める投資商品(株式、投資信託など)の割合を減らし、元本保証の金融商品(定期預金や個人向け国債など)の保有割合を増やしましょう。
たとえば、「投資商品:低リスクの金融商品=80%:20%」だった資産配分を「投資商品:低リスクの金融商品=50%:50%」に変更するといった具合です。
低リスクの金融商品の割合を増やせば、株価などの市場価格が下落して投資商品の評価額が下がったとしても、資産全体に対する影響は少なく済みます。
資産配分を変更する際は、投資商品を売却して低リスクの金融商品を購入する方法が一般的です。
積立投資に取り組んでいる場合は投資商品の積立金額を減らし、低リスクの金融商品の積立金額を増やすことで、少しずつ資産配分を変更していく方法もあります。
収入や保有資産には個人差があるので、適切な資産配分は人それぞれです。
それぞれの状況に応じて資産配分を見直し、市場価格の下落による資産価値の目減りのリスクに備えた資産運用に心がけましょう。
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資産運用を継続しながら取り崩す
定年退職した後も人生が長く続くと考えると、資産を長持ちさせることも重要です。
資産寿命を延ばすには、資産運用を継続しながら計画的に取り崩すことを検討しましょう。
たとえば、老後の生活資金として2,400万円を65歳から毎月13万円ずつ取り崩す場合、まったく運用しないと約80歳で資産はゼロになります。
一方で、年3%で運用した場合は84歳、年5%で運用した場合には88歳まで資産寿命を延ばすことができます。*2
あくまでもシミュレーション上の数字であり、必ずこの通りになるわけではありませんが、運用を継続することで資産寿命を延ばせる可能性は高くなります。
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まとめ
老後の資産運用では、お金を「守ること」「大きく減らさないこと」を強く意識することが大切です。
資産配分を見直して低リスクの金融商品の割合を増やし、資産が目減りするリスクを下げることが大切です。
また、生活資金として取り崩す場合でも、運用を継続することで、資産寿命を延ばせるかもしれません。
年齢や収入、保有資産によって人それぞれで最適な資産配分は変わってくるので、大切な資産を守ることを第一に考えて老後の運用方針を検討してみましょう。
*1 出所)金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
*2 出所)三菱UFJ国際投信「資産運用の必要性の巻」
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三菱UFJ国際投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員