ポイント
訪問販売や電話勧誘販売などを受け、押しの強い勧誘を断り切れず、不本意に商品を購入させられてしまうというような被害事例は跡を絶ちません。
ご自身の築き上げてきた大切な資産を守るためには、悪質な取引に対して充分に警戒し、安易に高額商品を購入しないよう心がけることが大切です。
万が一、不本意に高額商品を購入してしまった場合には、法律上、「クーリングオフ」の制度などの救済方法が用意されていますので、適宜専門家に相談してください。
この記事では、大切な資産を守るためのチェックポイントや、不本意な商品購入などをキャンセルするための救済方法について、弁護士の視点から解説します。
大切な資産を守るための心がけ|取引に臨む際のチェックポイント
訪問販売や電話勧誘販売などを行う事業者は、消費者に商品を購入させるよう様々な勧誘を持ちかけてくるケースが多々あります。
しかし、老後の生活に備えて貯めた大事な資産を守るためには、その取引が適切なものであるかどうかをご自身で見極めなければなりません。
もし訪問販売や電話勧誘販売などを受けた場合には、以下のチェックポイントに十分留意しましょう。
事業者の説明を客観的に聞いているか
事業者は多くの場合、営業活動として勧誘をしている以上、なんとかして商品を買って欲しいと考えています。
そのような場合、商品のメリットばかりを強調してデメリットを隠していることも考えられます。
そのため、セールストークを聞く際には客観的な視点を保ちつつ、その商品の購入を検討する場合には冷静に行う必要があります。
その商品は本当に必要か?
訪問販売や電話勧誘販売では、多くの場合、売り手である事業者の論理で消費者にアプローチしてきます。
このとき勧誘される商品は、消費者がもともと欲しいと思っていた商品ではないこともあるでしょう。
そうであるにもかかわらず、事業者の巧みなセールストークに操られ、その商品がいかにも自分にとって必要であるかのごとく思い込んでしまうことも考えられます。
事業者のセールストークを聞いている最中でも、常に「この商品は自分にとって本当に必要かどうか」というポイントを忘れないようにすることが大事です。
即決購入は避け、持ち帰って検討しましょう
訪問販売や電話勧誘販売を受けている最中、どうしてもその商品を買いたいという気持ちが大きくなることがあるかも知れません。
しかし、悔いのない取引をするためには、セールストークを受けただけで客観的な判断が難しいにも拘わらず、その場で購入を決めてしまうのは望ましくありません。
一度頭を冷やしてから慎重に検討することが大切です。
そのため、訪問販売や電話勧誘販売を受けた時には持ち帰って検討する旨を事業者に伝え、その場ですぐに購入することは避けた方が無難でしょう。
しばらく期間を置いて再度検討すれば、「やっぱり必要ない商品だった」となる可能性は十分にあります。
特に、「今だけ〇%オフ」「先着〇名限定」など、即決購入を迫るような宣伝文句は、時として冷静さを失うきっかけになる言葉です。
このような勧誘に飛びついてしまい、悪徳商法の被害に遭ってしまうことにもなりかねません。
慎重に検討してご自身が納得できるものであるかどうかを見極めてから、商品を購入するよう心がけましょう。
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もし不本意に商品を購入してしまったら?クーリングオフ制度について
様々な注意をしていても、訪問販売や電話勧誘販売などにより不本意に商品を購入させられてしまい、後悔することもあるかも知れません。
そのような場合、早い段階であれば「クーリングオフ」の制度を利用できる可能性があります。
クーリングオフをすればペナルティなしで契約を解除
クーリングオフとは、消費者保護の必要性が高い一部の契約類型について、一定期間、無条件で購入契約等を解除できる制度です。
クーリングオフは消費者の権利であるため、違約金や手数料などは一切かからず、また多くの場合、返品にかかる費用なども業者負担となります。
クーリングオフを利用することは、商品の購入契約をなかったことにするためのもっとも確実な方法といえます。
その一方で、クーリングオフには厳しい期間制限が設けられているので、購入をキャンセルしようと思い立ったらすぐに行動することが大切です。
クーリングオフができる取引と期間
クーリングオフができる取引と、各取引のクーリングオフ期間は以下のとおりです。
通信販売での購入商品はクーリングオフ不可なので注意
なお、通信販売で購入した商品は、消費者が主体的に購入した物と考えられるため、クーリングオフの対象外とされていることに注意が必要です。
通信販売の商品についても、業者の裁量によって返品可能期間が設けられているケースがありますが、クーリングオフとは異なり、返品にかかる費用(送料など)は消費者側の負担となります。
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クーリングオフができない場合の対処法|契約の取消し
クーリングオフ期間は非常に短いため、返品を迷っているうちに期間が過ぎてしまうということもあり得ます。
この場合、もし事業者側に契約締結に際しての不当な行為があった場合には、消費者契約法に基づき、契約を取り消すことができる可能性があります。
消費者が契約を取り消すことができるのは、事業者に以下の行為があった場合です(消費者契約法4条1項~3項)。
- 重要事項の不実告知
(例)「柱がひび割れているのでリフォームが必要です。」→実際のひび割れは軽微であり、リフォームを必要とする水準には到底達していない - 不確実な事項に関する断定的判断の提供
(例)「この商品は絶対に値上がりします。確実です。」 - 不利益事実の不告知
(例)デメリットを全く説明しない、ランニングコストがかかることを説明しないなど - 消費者の要求に反する不退去
(例)「買ってくれるまでは帰りませんよ。」 - 退去しようとする消費者の妨害
(例)「買ってくれるまでは、帰ってもらっては困ります。」 - 過量契約
(例)食べきれない量の健康食品を買わされる、家族の人数分を大きく超える布団を買わされるなど - 消費者の不安を煽る告知
(例)「このままでは就職など到底不可能です。今すぐ当社のセミナーを受講してください。」 - デート商法
(例)消費者の好意を利用して商品を買わせること - 判断力の低下の不当な利用
(例)認知症の高齢者に高額の羽毛布団を買わせるなど - 霊感商法
(例)「このままでは一生幸せになれない。パワーストーンを買えば幸せになれます。」 - 契約締結前にサービスを提供する行為
(例)消費者の了承を得ないうちに、事業者が勝手に車のエンジンオイルを交換し、代金の支払いを強制するなど
ただしクーリングオフとは異なり、契約取消しの場合は、事実関係について事業者との間で争いになるケースも多くみられます。
そのため、消費者庁や弁護士などに相談したうえで対応するとよいでしょう。
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まとめ|悪質な取引を警戒して、資産を自衛しましょう
日常生活を過ごしているだけで、私たちには様々な取引の勧誘が持ちかけられてきます。
そのような時、苦労して築き上げた財産を守るためには、正しい取引の知識を身に着け、十分に警戒し慎重に検討してから意思決定をすることが大事です。
そして万が一、悪徳商法の被害に遭ってしまった場合などには、いち早く信頼できる親族や消費者庁の窓口などにご相談ください。