マイナンバーカードが健康保険証に 医療費負担で想定されるメリットと利便性を解説

マイナンバーカードが健康保険証に 医療費負担で想定されるメリットと利便性を解説

2016年1月からスタートしたマイナンバー制度が、今年、6年目を迎えます。
これまで私たちは、マイナンバー以外にもいくつかの「番号」を付与されてきました。

たとえば、

  • 基礎年金番号
  • 健康保険被保険者番号
  • 住民票コード

など、それぞれの機関ごとにそれぞれの番号が割り振られていました。

しかしマイナンバー制度の開始によりこれらを一本化することで、より便利によりスムーズに手続きを行うことが可能となりました。

「マイナンバー」と「マイナンバーカード」。
この2つは一見すると同じものと思われがちですが、実は大きな違いがあります。

今回はマイナンバー「カード」について、「新たなサービス」を中心に解説します。

マイナンバー「カード」ってどんなもの?

2020年12月1日現在、マイナンバーカードの人口に対する交付枚数率は23.1%と公表されています*1
ところが、
「マイナンバーカードを発行してもらっていないが、自分のマイナンバーは知っている」
という人もいます。
それは、個人番号通知書や通知カード、マイナンバーの記載がある住民票などから自分のマイナンバーを知ることができるからです。

ここで一つ、重要な違いを確認しておきましょう。
「マイナンバーを知っている」
ということと、
「マイナンバーカードを持っている」
ということでは、意味合いが異なります。
マイナンバーを記入することで社会保険/雇用保険の手続きや税申告がスムーズに行うことはできますが、「マイナンバーカードがなければ利用できない申請やサービス」があるのです。

たとえば、

  • マイナポータルを使った各種行政手続きのオンライン申請
  • 行政が提供するサービスの管理
  • コンビニでの各種証明書の取得
  • 本人確認の公的な身分証明書(マイナンバーの提示と本人確認書類が同時に必要な場合、マイナンバーカードのみが一枚で済ますことができる)

これらの利用には、マイナンバーカードが必要です。
くり返しになりますが、「マイナンバーを知っている」だけでは利用できない申請手続きやサービスがあります。

ただし、マイナンバーカードには有効期限があります
カード自体の有効期限は、発行から10回目の誕生日(20歳未満は5回目の誕生日)までですが、カード裏面のICチップに搭載されている「電子証明書」の有効期限は、発行の日から5回目の誕生日までです。

つまり2016年のマイナンバー元年にカードの交付を受けた場合、2020年から21年にかけて電子証明書の更新が必要となり、該当者へは通知が届きます。

このように有効期限が2つあるのは、以下の理由によるものです。

マイナンバーカード・・・顔写真と本人との一致の観点

電子証明書・・・暗号技術の解読を防ぐ観点

本人確認の身分証明書としてだけでなく、自治体サービスやe-Tax等の電子証明書を利用した電子申請など、様々なサービスを利用できる便利なカードです。
今後、新たにスタートする「マイナンバーカードの健康保険証利用」について、さらに理解を深めましょう。

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マイナンバーカードの健康保険証利用が実現

2021年3月より医療機関や薬局などで、順次、マイナンバーカードを健康保険証として利用することができるようになります
ただし、いきなりマイナンバーカードが健康保険証になるものではありません。
事前に「マイナポータル」で初回登録を行う必要があります。

マイナポータルは政府が運営するオンラインサービスの名称で、各種行政手続きがワンストップで行えるほか、行政からのお知らせの確認ができます。
また公金決済サービスも利用できるため、マイナポータル経由でネットバンキング(ペイジー)やクレジットカードでの決済を行うこともできます。
ところで、マイナンバーカードを健康保険証として利用するメリットは何でしょう。

まずは、
「健康保険証の発行を待たずに、医療費の支払いが自己負担額のみで済む」
ということです。
これまで就職・転職の際など、健康保険証を受け取るまでに数日から数週間を要していました。
また、婚姻による名字の変更や被扶養者となる場合にも新たな健康保険証の交付を待つ必要がありました。

実務上の流れは以下のようになっています(協会けんぽの場合)。

  1. 資格取得日(入社日や婚姻日)に申請
  2. 日本年金機構で申請内容の確認・登録
  3. 協会けんぽへデータを回送し健康保険証の発行・送付

つまり申請してから健康保険証が手元に届くまで、少なくとも5日程度かかるのです。

通常、医療機関や薬局で健康保険証を提示しない場合、医療費は全額自己負担となります。
それが今後、資格取得手続き済みであることがオンライン上で確認できれば、健康保険証が未発行であっても自己負担額の支払いで済ませることができるようになります。

仮に全額負担した場合は、後日、健康保険証を提示することで自己負担額を超える部分は返金されますが、マイナンバーカードを健康保険証として利用することで不要な出費を避けることができます。


もう一つのメリットとして、
「高額な医療費がかかる場合、手続きせずに自己負担限度額までの支払いで済む」
ということがあげられます。

手術や入院で多額の支払いが発生した時、現状では、

  • 限度額適用認定証の申請
  • 高額療養費制度の利用

このいずれかの手続きをとることで、自己負担限度額までの支払いに留めることができます。

限度額適用認定証は事前に保険者(協会けんぽ等)へ申請することで交付されますが、急な事故や病気で搬送された場合など、事前の手続きは不可能です。
もっとも、事前申請ができなかった場合、事後に高額療養費の支給申請を行うことでお金が戻りますが、一時的とはいえ、高額な支払いは大きな負担となります。
このようなことからも、マイナンバーカードを健康保険証利用する価値があるといえるでしょう。

別の観点からも検討してみます。
「健康を維持すること」で、医療費削減に大きく貢献します。

オンラインで資格確認等ができるようになると、薬剤情報や特定検診情報等の経年データの閲覧が可能になります。
これにより、かかりつけの医療機関以外でも患者の既往歴や薬剤情報を集約・把握できるため、より適切で迅速な治療や検査を受けることができます。
また、複数の医療機関受診による「重複処方」について、医療従事者らがこれらの情報を適正に共有することで、患者本人の安全確保にもつながるといえます。

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直面している問題点

マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、私たちが受けられる「新たなサービス」について触れてきました。
ではサービスを提供する側、つまり、医療機関や薬局における準備状況はどうなのでしょう。

政府の目標としては、2021年3月時点で6割程度、2023年3月時点で概ね全ての医療機関等でのオンライン資格確認システムの導入を目指しています
しかし2020年11月8日時点での「顔認証付きカードリーダー申込数」は、全体のわずか16.9%でした*2
カードリーダーが設置されなければ、マイナンバーカードを提示しても健康保険証として機能しないため、まずは医療機関での導入が急がれます。

なお、オンラインでの資格確認ができない場合はこれまで同様、健康保険証を提示することで自己負担額にて受診できます。
今後も健康保険証を使用する機会はあるので、破棄しないようご注意ください

政府が推進する電子化・デジタル化の一環である「オンライン資格確認システム」の普及のためにも、マイナンバーカード未取得の方はこの機会に交付申請をされてはいかがでしょうか。

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