ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体に個人が寄附できる制度です。
自治体から返礼品がもらえるため、「ふるさと納税はお得」と聞いたことがある人もいるでしょう。
しかし、その仕組みはよくわからないのではないでしょうか。
「ふるさと納税は手続きが難しい」と感じるかもしれませんが、実際にはそれほど難しい手続きはありません。
勤務先で年末調整を受けている会社員であれば、確定申告が不要なケースもあります。
今回は、ふるさと納税の仕組みやメリット、注意点について解説します。
ふるさと納税の仕組みとは
ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体(市区町村)に寄附を行ったときに、寄附金のうち2,000円を超える部分について、所得税・住民税から控除を受けられる制度です。*1
地方で生まれ育った人が進学や就職を機に生活の場を都会に移すと、そこで納税を行うことになります。
都会の自治体は税収を得られますが、生まれ故郷の自治体には税収が入らなくなってしまいます。
そこで、「税制を通じてふるさとへ貢献する仕組み」としてふるさと納税が導入されました。
自治体に寄附を行うと、その寄附金の使い道を選ぶことができ、返礼品として地域の特産物などがもらえます。
また、ふるさと納税の寄附金には「寄附金控除」が適用されるため、所得税・住民税の控除(還付)を受けられます。
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ふるさと納税の3つのメリット
ふるさと納税には、以下3つのメリットがあります。
返礼品がもらえる
ふるさと納税を利用して自治体に寄附を行うと、寄附金の額に応じて返礼品がもらえます。
米や果物、肉、魚といった食品から、地域のお店で使える買い物券、雑貨、工芸品など、自治体ごとにさまざまな返礼品が用意されており、寄附をするときに返礼品を選べます。
生まれ故郷以外の自治体にも寄附できるので、返礼品を目的に寄附先を探すのもいいでしょう。
返礼品を受け取ることで、自治体への理解を深めるきっかけになるかもしれません。
税金が控除(還付)される
ふるさと納税で寄附をすると寄附金控除が適用され、寄附金の額のうち2,000円を超える部分は、原則として所得税・住民税から全額控除されます。
たとえば、年収700万円の給与所得者(扶養家族が配偶者のみ)が30,000円のふるさと納税を行う場合、所得税と住民税から控除される金額は28,000円(30,000円-2,000円)です。*2
所得税はふるさと納税を行った年、住民税はふるさと納税を行った年の翌年度にそれぞれ控除される仕組みです。
ただし、控除対象となる寄附金の額には上限があり、上限額は収入や家族構成によって変わってきます。
正確な上限額を知りたい場合は、税理士などの専門家に相談するといいでしょう。
寄附金の使い道を選べる
ふるさと納税の寄附金は、自治体がその寄附金をどのように使うかを選択できます。
「子育て支援」「医療・福祉」「環境保護」など、自治体によって寄附金の使い道がいくつか用意されています。
ふるさと納税を通して、自治体の取り組みや課題を知るきっかけになるかもしれません。
また、寄附金の使い道から応援する自治体を選ぶことも可能です。
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ふるさと納税のやり方
ふるさと納税制度に参加している自治体であれば、どこの自治体にも寄附をすることができます。
各自治体のホームページに寄附金の使い道や返礼品、手続き方法など、ふるさと納税の詳細が記載されています。また、複数の自治体の情報がまとめて掲載されている「ふるさと納税のポータルサイト」を利用する方法もあります。
自治体によってふるさと納税のやり方は異なるので、まずは応援したい自治体を選び、ホームページで手続き方法を確認するといいでしょう。
不明点があれば、自治体の担当窓口に問い合わせれば教えてもらえます。
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ふるさと納税の手続き
ふるさと納税をして所得税・住民税の控除を受けるには、原則として確定申告をしなくてはなりません。
しかし、本来確定申告する必要がない給与所得者(会社員)の場合は、確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」が利用できます。
確定申告とワンストップ特例制度の詳細はそれぞれ以下の通りです。
確定申告
確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日)の所得と税金を計算して税務署に申告・納税を行う手続きのことです。
納めすぎた税金がある場合は、確定申告をすると還付されます。
自営業者や不動産所得がある人、年収2,000万円以上の給与所得者などは確定申告が必要です。
また、医療費控除などを受ける人も確定申告を行います。
確定申告でふるさと納税の寄附金を申告すると寄附金控除が適用され、所得税や住民税から控除されます。
ワンストップ特例制度
ワンストップ特例制度とは、確定申告が不要な給与所得者がふるさと納税を行う場合、確定申告をしなくても寄附金控除を受けられる制度です。
勤務先で年末調整を受けている会社員は、ワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告不要でふるさと納税ができます。
ふるさと納税先の自治体が5団体以内で、納税先の自治体に申請書を提出すると適用されます。
ワンストップ特例制度では、寄附金のうち2,000円を超える部分は所得税からではなく、ふるさと納税を行った翌年度の住民税から全額控除される仕組みです。
納税先の自治体が5団体を超えると確定申告が必要になるので注意しましょう。
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ふるさと納税の注意点
ふるさと納税は年間を通して申し込みできますが、寄附金控除を受けるための期限があります。
今年1年間(1月1日~12月31日)の所得について控除を受ける場合は、年末までに自治体が寄附金を受領する必要があります。
年末に申し込みをすると自治体が年内に寄附金を受領できず、翌年分として処理されてしまう恐れがあります。
また、確定申告やワンストップ特例制度の申請を忘れてしまうと、自治体から返礼品はもらえても、所得税・住民税の控除は受けられなくなってしまいます。
1月や2月にふるさと納税を行うと、確定申告をするのは約1年後です。
ふるさと納税を行ってから確定申告まで期間が空く場合は、手続きを忘れないように注意しましょう。
また、自治体から届く「寄附金受領証明書」は確定申告に必要なので、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
その他、ふるさと納税では、納税している範囲内でしか税金は控除されないことにも留意が必要です。
例えば、所得税・住民税非課税世帯の方がふるさと納税で寄附を行う場合、返礼品はもらえますが、控除できる税金がないため、寄附金控除の恩恵を受けられない点にも注意が必要です。
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ふるさと納税で自治体を応援しよう
本来ふるさと納税は、税制を通じてふるさとへ貢献することを目的に始められた制度ですが、今では返礼品や節税といった特典が注目されるようになりました。
そして、今後もますます魅力的な返礼品は増えていくでしょう。
ぜひこの機会に、生まれ故郷や住んだことがある自治体にふるさと納税をしてみてはいかがでしょうか。
*1 出所)国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」
*2 出所)総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ」