上手に老後に備えよう 夫婦二人で厚生年金に加入するメリットとデメリットを検証

上手に老後に備えよう 夫婦二人で厚生年金に加入するメリットとデメリットを検証

老後はまだまだ先のことでも、将来の老後資金のことは頭のどこかで気になってしまうという人もいるのではないでしょうか。
住宅ローンや子どもの教育費など、先に対策すべき資金が多々あり、なかなか老後資産形成に手が回らないという人も多いかと思います。

そのような人にこそ実践して欲しいのが、まずは焦らず共働きをする・続けるということです。
共働き世帯では片働きの場合に比べて将来の年金額が高くなるケースが多く、自然と老後資産形成につながります
力を合わせて家計を支える共働き夫婦も珍しくない昨今ですが、あらためて共働きによる経済的なメリットを知り、2人の老後の年金を築いていきましょう。

片働きと共働きの年金額、当然共働きの方が多くなる?

共働きをすることで世帯の収入は2人分、夫か妻のどちらか一方だけが働く片働きの場合に比べて世帯収入が増加します。
将来の年金も同様に2人分となり老後の収入は増えるはず……。

ところが、国が2019年に実施した年金財政検証では結果によると、世帯収入が同じなら、片働き世帯か共働き世帯かにかかわらず、将来受給する年金額(世帯合計)は基本的に同水準であることが示されています*1_13

たとえば、以下の2つの世帯パターンでは世帯の年金額は同じということです。

  • 片働き世帯:夫の収入40万円/妻の収入0円(専業主婦)
  • 共働き世帯:夫の収入20万円/妻の収入20万円

世帯収入はどちらも40万円ですが、片働き世帯は年金保険料を払っているのは夫だけ。
妻は夫の扶養に入り、保険料を払わなくても将来は老齢基礎年金を受給できます。
夫自身は将来、老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給します。

一方、共働き世帯では、夫婦それぞれに年金保険料を払い、将来は老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給します。

まとめると次のようなイメージです。

出所)厚生労働省「2019(令和元)年財政検証関連資料/公的年金の負担と給付の構造(世帯類型との関係)」*1を基に三菱UFJ国際投信作成

世帯年収が同じなら、仮に夫婦の一方が専業主婦(夫)でも世帯の年金水準は同じというのであれば共働きのメリットは薄れます。

しかし、視点を変えてみましょう。
たとえば「夫30万円、妻20万円」というように、共働きで世帯収入が増加すれば、それに応じて将来の世帯の年金額も増加することになります。
片働き世帯よりも共働き世帯の方が、より多くの年金を受給できる可能性が高くなります
もちろん、片働き世帯の一方の専業主婦(夫)も共働きを始め、世帯収入を上げれば、より年金額が上がることも期待できます。

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共働きにもタイプはいろいろ、夫婦の年金もいろいろ

共働きといってもさまざまな共働きのタイプがあります。
たとえば、「夫婦で正社員」「正社員+パート」「夫婦共に自営業」などがありますが、これら3つの共働きのタイプでは将来の老齢年金給付のタイプが異なります。

  1. 夫婦で正社員

    夫:老齢厚生年金+老齢基礎年金

    妻:老齢厚生年金+老齢基礎年金


  2. 正社員+パート(扶養範囲内)

    夫:老齢厚生年金+老齢基礎年金

    妻:老齢基礎年金


  3. 夫婦共に自営業

    夫:老齢基礎年金

    妻:老齢基礎年金

これらの3つの共働き世帯を比べたときに、仮に世帯収入が同じでも、年金額が同水準という前述の検証結果は成り立ちません。

老齢基礎年金は現役時代の収入額にかかわらず、受給できる年金額は一定です。
40年間保険料を払い続けた場合の満額の年金額は毎年見直しされますが、2020年4月現在の年金額は78万1,700円*2
共働きをして2人の力を合わせて収入アップを目指しても、将来の年金は約156万円の最高額を上回ることはありません。

つまり、3番の夫婦共に自営業の世帯では、1番、2番の共働き世帯に比べて将来受給できる年金が少なくなることを意味しています。
実は冒頭で紹介した年金財政検証結果でも、厚生年金に加入している世帯での比較です。
「世帯収入=世帯年金額」となるのは厚生年金に加入していることが前提となります。

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子育て世帯が知っておきたい、社会保険加入メリット

労働時間や年収を敢えて制限しながら働く人は、少なくありません。
扶養に入りながらの共働きでも世帯の年金額が同水準なら、社会保険料負担がなく手元に残るお金が増えるほうを選びたくなるためと思われます。
しかし、夫婦がともに厚生年金に入ることは、将来の年金給付以外にも大きなメリットがあります。

厚生年金の養育特例

3歳未満の子どもを持つ人、出産を希望している人が知っておきたいのが厚生年金の「養育特例」制度です。
これは、時短勤務などで厚生年金保険料を算出する際のベースとなる標準報酬月額が低くなっているとしても、出産前の標準報酬月額で厚生年金保険料を支払ったとみなしてくれる制度です*3

そもそも厚生年金は、現役時代に支払う厚生年金保険料も、将来受給する厚生年金額も収入に応じて計算されます。
フルタイム勤務だったものを時短勤務に切り替え収入が低下すると、厚生年金保険料の低下、年金額低下へと繋がる仕組みになっています。
しかし、収入低下の原因が出産・育児に伴うものである場合、厚生年金保険料の負担は抑えつつ、将来の厚生年金は多くもらえるように配慮された制度です。

養育特例は厚生年金に加入している人だけが申請できる制度で、国民年金に加入している人・扶養に入ってパートなどで働く人にはない制度です。

健康保険による所得保障メリットも

厚生年金に加入する人は、同時に健康保険にも自分自身が加入することになります。
厚生年金同様に、自分で健康保険に加入している人だけにあって、国民健康保険や扶養に入っている人にはない制度もあります。

そのひとつが「傷病手当金」です。
傷病手当金は業務上以外の事由による病気やケガで就労不能となり、療養のために続けて3日以上会社を休み、給料が支給されない場合に4日目からの無給期間に対し、健康保険が支払ってくれるという収入保障制度です。

産休を取得する人で、産休中の給与が支払われない場合に受給できる「出産手当金」というのもあります。

傷病手当金も出産手当金も、受給できる額の詳しい計算方法はここでは省略しますが、休業前給料の約3分の2と考えておくといいでしょう。
同じ共働きでも、扶養に入らず自分で社会保険料を払うことで得られるこれらのメリットは知っておきたいですね。

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節税メリットも活かせば将来の年金はさらに増やせる

片働きによる扶養の状態を外れ、夫婦ともに厚生年金に加入をすることは、老後資金を形成していく上でとてもメリットが大きいと言えます。
しかし、社会保険料負担が厳しかったり、フルタイム労働ができないなどの事情で扶養に入ることを選ぶ人もいるでしょう。

そのような場合でも、さまざまな所得控除を活かし、所得税の納付が必要となる年収103万円のラインを越えてさらに働くことも可能です。

たとえばiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入すれば、小規模企業共済等掛金控除が適用されてiDeCoに払込んだ全額分、所得を減らすことができます。
毎月1万円ずつ払込めば年間12万円課税所得が減ることになります。

仮に年収125万円稼ぎ、毎月1万円ずつiDeCoに拠出する場合を考えてみましょう。
年収:125万円
所得控除:115万円(基礎控除48万円、給与所得控除55万円*4、小規模企業共済等掛金控除12万円)

この場合の所得税の計算は次のようになります。
125万円-115万円=10万円(課税所得)
10万円×5%=5,000円*5

年間の所得税は5,000円です。
iDeCoに加入しない場合の年間所得税は1万1,000円ですから、6,000円分の恩恵が受けられることになります。
仮にiDeCoの拠出を30年間続けるとして、年収および他の条件が変わらないとすれば30年間で18万円という計算になります。

iDeCoで積み立てる老後資金のほうもシミュレーションしてみましょう*6
仮に30年間、毎月1万円を拠出しながら3%で運用できると仮定すれば、30年後の元利合計額は約583万円(元本360万円+運用益223万円)になる計算です。
運用利回りが2%だと見積もる場合でも、元利合計額は約493万円(元本360万円+運用益133万円)になる計算です。

夫婦共に厚生年金に加入し、それぞれが所得控除をしっかりと活用しながら、将来の年金額アップに努めてみてはいかがでしょうか
さまざまな共働きのメリットをしっかり活用し、夫婦で力を合わせて家族の資産を築いていきましょう。

*1 出所)厚生労働省「2019(令和元)年財政検証関連資料

*2 出所)日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法

*3 出所)日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

*4 出所)国税庁「No.1410 給与所得控除

*5 出所)国税庁「No.2260 所得税の税率

*6 出所)金融庁「資産運用シミュレーション

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三菱UFJ国際投信株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員

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