その時どうする? 投資での株式分割・TOBの考え方

その時どうする? 投資での株式分割・TOBの考え方

株式を保有していると、株式会社特有のさまざまなイベントに遭遇することがあります。とくに長期投資をしていると、そういったイベントが売買の判断のポイントになることも少なくありません。

例えば、2019年において、株式分割が行われた上場会社は約150社*1、株式公開買付け(TOB)の対象となった上場会社は約60社*1もあります。保有株式にこういったことが起こる可能性は十分あると考えておいたほうがいいしょう。

今回は、意外とよく起こる「株式分割」「買収」について、その仕組みから株価への影響まで、簡単に解説していきます。実際に起こった時に慌てないよう、基礎的な知識を身につけておきましょう。

株式分割

株式分割を一言で説明すると、1つの株式を任意の割合で分けることを指します。もし株式を保有している場合、保有株式数が割合に応じて増えると同時に、1株あたりの価値が割合に応じて小さくなります

例えば、理論上の価値が1株あたり1,000円の株式が「1:10」の割合で株式分割された場合、1株が10株に分けられることになります。それと同時に、1株あたりの価値は10分の1の100円となります。

株式分割前にこの株式を100株保有していた場合、トータルで10万円の価値ということになります。株式分割後、保有株式数は1,000株になりますが、理論上のトータルの価値は10万円のままで変わることはありません。

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株式分割を行う目的

理論上の価値が変わらないのに、わざわざ株式分割を行うのには理由があります。それは1株あたりの金額が下がる、かつ、市場に流通する株式数が増えることで、投資家が株式の売買をしやすくなることです。

そのため、売買に参加する投資家が増え、売買が盛んに行われることが期待されます。売買の注文が少ない株式だと、ちょっとした大口注文で株価が大きく動いてしまうこともありますが、株数と共に投資家が増えて売買の発注が増えれば相対的に株価も安定します。
上場基準のなかには株主数の項目もあるため、例えば東証一部への昇格を目指す会社等にとって、株式分割が株主数の面でメリットをもたらすこともあります。

ちなみに、株式分割のデメリットにも触れておくと、株主数の増加に伴い管理コストが増えるという点が挙げられます。メリットと裏表の関係ですが、両方を天秤にかけたうえで会社は株式分割の判断を行っているわけです。

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株価への影響

株式分割が行われると、売買がしやすくなるため一般に株式を買おうとする投資家が増える効果が期待できます。株価は需要と供給のバランスで決まりますが、需要が増えることで株価が押し上げられることがあります。

このことから、投資家にとって株式分割はプラス材料として捉えられるのが一般的です。ただし、相場に絶対はありません。株式分割がきっかけで既存株主による保有株式の一部を売りに出す動きが出るなど、逆に株価下落につながるケースもあるので注意しましょう。

ここで重要なのは、株式分割が直接的に会社の業績に影響を与えることはない点です。株価が変動しても、基本的に会社の価値は変わりません。そのため、株式分割だけで株価が過度に上昇した場合は、実態と株価がかけ離れてしまっている可能性があります。

株式投資では株価で売買が行われるため、株価を無視することはできません。しかし、長期投資の場合は特にですが、短期的な株価の変動に右往左往せず、本当の意味で大切な「その会社の業績が将来どうなっていくか?」という点に注目する必要があるといえるでしょう。

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買収と株式公開買付け(TOB)

買収というのは、他の会社の経営権を取得して自社の支配下に置くことを意味します。そのための方法としては、買収先の株式の過半数を取得して子会社化するケースがよく見られます。

買収するメリットは、買収先の技術やノウハウ、営業基盤など、競争力の源泉となるものを手に入れられることです。さらに、買収先と自社の協力により、単純に合算するよりも大きな効果(シナジー効果)を得られることがあります。

買収が成功するかどうかは、買収する会社と買収先のシナジー効果がどれだけ得られるかがポイントとなります。一方で、期待したシナジー効果が得られなかった場合、買収が逆効果になる可能性もあります。

もし株式を保有している会社が買収を予定している場合、「買収の対価はいくらか?」「買収によってそれ以上の効果が期待できるか?」「他の投資家が好意的に受け止めるか?」といった点にも注目してみましょう。
買収案件の規模が大きければ大きいほど、業績や株価への影響も大きくなるので、より慎重な分析が必要になります。

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TOBとは何か?

買収を行うスキームの1つに、株式公開買付け(TOB)というものがあります。TOBは、株式の買付けを行う期間・株式数・価格等を公開したうえで、市場外で株式を集める方法です。

TOBは、株主が公平に売却できる機会を確保する目的で、金融商品取引法において定められたルールです。もし市場外で大量の株式が買い集められた場合、その情報を知らない株主は乗り遅れて損をする可能性があります。

そのため、市場外で一定以上の大規模な株式取得を行う際には、TOBによって買付け内容を公開することが義務づけられています。買収で市場外において大量の株式を買い集める場合も、このTOBに則って株式取得が行う必要があるわけです。

ちなみに、TOBを実施する場合、買付けを行う株式数の上限・下限を設定することができます。上限を超えて買付けへの応募が集まった場合、株主は応募した株式を売却できないことがあります。また、下限の株式数まで応募が集まらなかった場合、TOBがそもそも不成立となり、株主は株式を売却することができません。

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TOBへの対応方法

保有株式がTOBの対象となった場合、以下のような対応方法が考えられます。

  • TOBに応募して株式を売却する
  • 市場で株式を売却する
  • 株式を保有し続ける

上記それぞれの方法について、細かく見ていきましょう。

TOBに応募して株式を売却する

まず考えられるのが、TOBに応募することです。順調にTOBが成立すれば、基本的には買付け内容で宣言された価格で株式を売却することができます。ただし、いくつか注意点もあります。

1つ目が、TOBの買付け株式数に上限・下限が設定されている場合など、そもそもTOBが不成立になったり、TOBが成立しても株式を売却できかったりする点です。TOBに応募すれば必ずすべての株式を売却できるわけではないので注意が必要です。

2つ目は、TOBに応募する手続きに手間やコストがかかることがある点です。TOBでは証券会社が代理人となって手続きを行うため、応募するためには代理人となる証券会社の口座において対象株式を保有している必要があります。

つまり、代理人となる証券会社の口座を持っていない場合には、新たに口座開設の手続きを行ったうえで、保有株式をその口座に移管する必要があります。証券会社によっては、この移管に手数料がかかることもあります。

市場で株式を売却する

次に考えられるのが、TOBを利用せずに市場で売却するという方法です。TOBに応募する場合に比べると、単純に市場で売却するだけでとてもシンプルな方法です。

TOBが発表された場合、買付け価格が相場において意識されます。そのため、買付け価格に引き寄せられるように株価が変動していくことが多く、うまく取引を進めれば、TOBと同等の価格で手軽に株式を売却することも可能です。

もちろん売買手数料はかかりますし、相場は予想外の動きになることもあるのでリスクもゼロではありません。多少の注意は必要ですが、応募の手間が省けるという意味で十分に合理的な選択肢と言えるでしょう。

株式を保有し続ける

最後は、TOBの買付け価格に納得できない場合など、株式をそのまま保有し続けるという方法です。保有し続けるとさらに高い株価になると考えているのであれば、予想通りにいかないリスクはあるものの十分に合理的な選択肢と言えます。

ただし、買収目的でTOBが行われる場合、TOB成立後に上場廃止になるケースも多々あります。上場廃止になると市場における売却できなくなるため、株式の処分が大変になることが予想されます。

TOBが行われる際には、上場廃止の可能性の有無も公開されるようになっています。株式を保有し続けることを考えている場合には、この項目は必ずチェックするようにしましょう。

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慎重に分析して行動しよう

今回は、「株式分割」「買収(とくにTOB)」についてフォーカスしてきました。これらは株式を長期保有していれば十分に起こる可能性があるもので、業績や株価における大きな節にとなることもあります。

もし実際にこれらのイベントに直面した場合には、自分がどういう目的で投資をしており、どういうリスクを取れるのかを考えたうえで、焦らずに慎重に分析して行動することを心がけていただければと思います。

*1 出所)松井証券「銘柄情報

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三菱UFJ国際投信株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員

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