金融商品には預貯金、株式、投資信託、保険等、さまざまなものがあります。低金利が長く続く昨今では、預貯金以外の金融商品でも資産形成をするのが望ましく、実際に株式や投資信託をはじめとした預貯金以外の金融商品を利用する人の割合が増えてきているという調査データがあります。しかしながら債券を保有しているという人の割合は4.4%*1と少数派にとどまっています。
では債券投資は、魅力のない金融商品と言えるのでしょうか。
今回は、そんな債券投資の基本知識を知って頂くためのお話をご提供します。
債券とは?
国や地方公共団体(自治体)、企業などが公共サービスの運営や事業を行うためには資金が必要になりますが、その調達手段のひとつとして広く投資家からお金の借り入れを行うことがあります。このとき発行するのが債券で、いわゆる借入証書のような有価証券です。
お金の借り入れというと、たとえば銀行にお金を借りる住宅ローンを思い浮かべる人は多いでしょう。このような借り入れでは一般的には借りる側と貸す側(金融機関)は1対1。しかし債券の場合、借りる側は1機関でも、貸す側(投資家)は多数です。こうすることで大きな額の資金が必要なときでも、大勢から少しずつ貸してもらうことで資金を集めやすくなるという特徴があります。
借り入れですから、「いつ返す」という期限が決められています。これを満期といい、満期時にお金を返すことを償還(しょうかん)といいます。住宅ローンなどでは毎月少しずつ返済していきますが、債券の場合は償還日にまとめて償還する仕組みです。投資家は債券を満期まで保有していれば、償還日には基本的に、約束された金額(額面金額)を受け取ることができます。
また、個人の住宅ローンなどでも利息を支払うのが通常です。債券も同様に、通常、お金を借り入れた期間は投資家に対して満期までの間、定期的に利息を支払います。利払いの頻度は年1回、年2回、年4回など、その債券によって異なります。投資家は最終的には債券の額面金額と利息の両方を得ることができる仕組みです。
債券は、満期まで保有することなく途中で売買することも可能です。実は債券は発行されてから満期が来るまでの間に、その価格が変動しています。変動の要因は金利変動、発行体の信用度や格付け、満期までの残存期間などさまざまな要素があり、購入時の価格よりも価格が上がったタイミングで売れば、差益を得ることも可能です。
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債券にはいろいろな種類がある
ひとくちに債券といってもその種類は豊富です。たとえば発行体や、債券が発行されてから投資家の手元に渡る時期など、さまざまなカテゴリで分けられます。
発行体による区分
発行体というのは国、地方公共団体、民間企業など、資金を調達する主体のこと。誰が発行したかによって債券の種類が異なります。大きな区分けで言うと、国や地方公共団体が発行するのが「公共債」、民間の企業が発行する「社債(事業債)」、外国の公的機関や企業が発行する「外債」などがあります。なお、公共債のうち国が発行するのが「国債」、地方公共団体が発行するのが「地方債」です。
債券の発行時期による区分
発行体が新たに発行する債券を「新発債」、すでに発行されて投資家間で取引される債券を「既発債」といいます。
利払いによる区分
債券を保有している投資家には利息が支払われる旨、前述しましたが、このような債券を「利付債」といいます。しかし実は、保有期間中に定期的に支払われるのではなく、あらかじめ利息相当分を差し引いて額面金額よりも低い価格で発行される債券もあります。これを「割引債」といいます。
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債券投資のために知っておくべき発行条件
利息を受け取ったり、額面金額よりも低い価格で購入して差益を得るなどお金を増やすことを期待して債券を購入することを債券投資といいます。債券投資ではどのような利益を期待するかによって、新発債か既発債のどちらかを選ぶこともありますが、債券が発行された時にあらかじめ設定されている一定の発行条件を確認しておくことが大切です。発行条件には次のようなものがありますので、必ずチェックしておきましょう。
額面金額
償還日に投資家に返済される金額のことです。
発行価格
債券が発行されるときの価格のことです。新発債(利付債)の場合は、発行価格がその債券の購入価格になります。発行価格と額面価格は同じである場合もあれば、異なる場合もあります。
表面利率
額面金額に対する利息の割合のことです。利息のことをクーポンといい、表面利率のことをクーポンレートともいいます。
償還日
投資家に額面金額が返済される日付のことです。
利払い日
利息が支払われる日のことです。
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債券投資のメリット・デメリット
先に債券の種類がいくつかあることを説明しましたが、債券は株式と同じように有価証券でありながら、株式に比べて安全性が高いと言われています。とはいえ、債券投資では株式投資と異なるメリットだけでなく、デメリットもありますので、きちんと理解してから投資しなければなりません。
メリット
債券投資では満期があるため、満期まで保有していれば基本的に額面金額が償還されます。一方、株式投資では満期がなく、保有している株を現金化するためには投資家自身が売るタイミングを見計らわなければなりません。
また、債券投資では利息の支払い(金額および支払日)が約束されています。株式投資では株主は配当金を受け取れる場合がありますが、配当金の支払いはその会社の業績などにも左右され、金額および支払いが約束されているわけではありません。
デメリット
債券を購入する場合、その種類によって買える場所が異なります。たとえば、国債、地方債、政府保証債は証券会社や銀行、郵便局などで購入することができます。社債や外債は証券会社で購入できますが、いつでも取り扱いされているわけではありません。債券銘柄によってはオンライン取引ができるものもありますが、証券会社に直接問い合わせをしなければならない場合が多くあります。一方、株式は多くの証券会社がオンライン取引を提供しており、債券に比べると購入しやすくなっています。
また債券は、満期が来れば額面金額が償還されるメリットがある一方で、その発行体が破たんしてしまえば、利息や償還金を受け取りができなくなるリスクがあります。このような信用リスクを避けるためには、債券の発行体の経営状態などを事前にしっかりと調べておかなければなりません。債券の安全度を判断する指標である「格付け」なども参考にするといいでしょう。
また、債券は満期を待たずに売却することができますが、流動性リスクがあることは理解しておかなければなりません。流動性リスクとは、現金化したいときにすぐにできない可能性があることです。売りたい時に、すぐに買い手が見つかるとは限らないことを意味します。他にも債券価格は日々変動していますが、現金化が必要な時に自分が売りたい価格で売れるかどうかは分かりません。これらの流動性リスクがあることは株式でも同じですが、債券の種類や銘柄によっても流動性が異なることを知っておきましょう。
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自分の目的に合わせて投資商品を選ぼう
上述の通り、発行体が倒産してしまったりすると、大きく損をすることがあります。このようなリスクを抑えるためには、1つの債券だけに集中投資するのではなく、複数のものを分散して保有しておくことも大事なことです。
とはいえ現実的には分散投資が難しい場合もあります。たとえば、複数の債券を購入すれば、それだけ資金が必要になります。また、債券には新発債と既発債がありますが、新発債は申込期間が限られていたり、既発債も数量が限定されているなど、1日のほとんどの時間を仕事や家事に費やしている人にとって購入タイミングを計るのは容易ではありません。
そこで、投資信託を利用して間接的に債券投資をするのもひとつの方法です。投資信託は運用のプロが市況を常にチェックしながらさまざまな投資対象に分散投資している有価証券です。なかには債券だけを投資対象にしている投資信託もあります。国内債券(公共債や社債など)だけを対象としているもの、外国債券だけを対象にしているものなど種類も豊富です。
他にも債券をメイン対象にしていながら株式を組入れているものなどもあり、それによってリターンとリスクの割合が変わってきます。
とはいえ、債券そのものに投資をする場合と、債券を投資対象にした投資信託に投資をする場合ではメリットとデメリットが変わってくる場合もあります。たとえば、投資信託であれば、少額でも分散投資ができますが、購入時手数料や信託報酬という保有期間中にかかる手数料も負担しなければなりません。
債券は、株式投資に比べると値動きが緩やかな傾向があるため、一般的に初心者向けと言われますが、直接債券を購入するのはハードルが高く感じるかもしれません。そのような場合は、債券を投資対象にした投資信託を活用してみてはいかがでしょうか。
*1 出所)金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和元年」
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三菱UFJ国際投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員