ポイント
内閣府が発表した調査結果*1によると、コロナウイルス禍に伴う全国のテレワーク率は34.6%、テレワーク経験者のテレワーク利用希望は8割を超えています。
この事実から見ると、テレワークの満足度は非常に高いと言えます。
何しろ、「継続希望が8割」なのです。
テレワーク経験者の多くはテレワークに移行することを望んでおり、「場所にとらわれない働き方」は概ね好評のようです。
しかし残念ながら、テレワーク率そのものは、コロナウイルス禍の真っ只中にあっても35%程度。
さらに、緊急事態宣言が明けたあとの通勤時間帯の電車を見ると、「通勤ラッシュ」が復活しつつあるようです。
ここから推測できるのは、やはり多くの企業・人にとって「テレワーク」は望ましいと考えるものの、ハードルは高いのではないかという仮説が浮き上がってきます。
一体なぜこれほど多くの企業が、満足率の高い働き方であるはずのテレワークを、主たる働き方として、導入することができないのでしょう。
テレワークは「高度な複合スキル」
まずはっきりさせておかなければならないのは、
「リモートワークが不可能な業態もある」という事実です。
接客を伴う仕事、福祉介護など、「リモート」では不可能な職業が
世の中にはたくさんあります。
しかし逆にいえば、オフィスでの事務仕事、俗に言う「ホワイトカラー」の仕事の殆どは、リモートワークでも可能です。
しかし、それらの仕事でもリモートワークの普及は遅い。
なぜでしょう。
実は自分もかなり長いことテレワークをやってみてわかったのですが、「テレワークができる状態」は、通信インフラが整っているかどうか以前に、働き手のスキルがそこそこ高いことが求められます。
リモートワークは、多様なスキルに支えられている。
— 安達裕哉(Books&Apps) (@Books_Apps) April 9, 2020
1.webツールのリテラシー
2.仕事の成果の定義
3.要件の明確化
4.文章コミュニケーション
5.フラットなチャットによるコミュニケーション
6.自己管理
リモートワークに一朝一夕に移行できないのは
当然といえば当然かも
上のツイートで述べたように、リモートワークには多様なスキルが水面下で求められ、
「職場に来なくていいだけでしょ?」と、簡単に実行できるようなものではありません。
例えばwebツールのリテラシー一つをとっても、
- 複数のwebチャットツールを使っている
- チャットへの入り方を知っている
- 画面の共有の方法を知っている
- 共有した画面に対する書き込みの方法を知っている
- 音声が聞こえない場合の対処を知っている
- 途切れてしまったときの代案を知っている
- 文字入力やファイル転送の方法を知っている
といったスキルを持っている人と持っていない人では、生産性に雲泥の差が生まれます。
しかもこれらは決して「当たり前に誰もが持っているスキル」ではありません。
また「成果の定義」「要件の明確化」についても、
オフィスでは上司が
「とりあえず、やってみてわかんなかったら聞きに来て」
という投げ方が可能だったのが、
「仕事を渡す前に、ある程度やり方と中身を、上司があらかじめ決めておかなければならない」
という形に変わります。相手のスキルによっては仕事を投げる前に「タスクの詳細化」が必要になるケースもあります。
これは、オフィスに集合していないため、
「聞きたい時に、すぐに相手がいるわけではない」
ので、リアルタイムのコミュニケーションが難しくなったからです。
またウェブチャットによるコミュニケーションは従来の会議のように「席次」があるわけではなく、全員に均等にスペースが与えられますから、上位者の権威が削がれている、と感じる人もいるようです。
それは従来の「階層型組織」に馴染んだ人にとってはストレスでしょう。
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テレワークではコミュニケーションのルールが大きく異なる
要するに、いままで暗黙知となっていた、仕事の進め方・ルール・コミュニケーションの方法に大きな変化があるので、それに対応するだけでリソースを食ってしまい、仕事どころではない、という人も多いのが実際のところです。
従来のやり方、つまり出社を踏襲すれば、それらのコストを支払う必要がない。
だから、
「テレワークなんて、一部の人達のものだよ」
そういう認識の会社が多いのです。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか?
「コロナウイルス」が急速に収束するとは限りません。
「アフターコロナではなく、ウィズコロナ」という人がいますが、まさにそのとおりです。
我々は多かれ少なかれ「ウイルスと同居する働き方」をしなければならない。
不要不急の外出を避けなければならない働き方は、今後永きに渡って継続する可能性も十分にあります。
「会わなくて済むなら、出来るだけ会わない」
これが社会的な常識となったとき、リモートワーク移行へのコストの支払いは、避けて通れないものであるでしょう。
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「社会人として身につけておくべきマナー」が、オフィスワークのマナーから、テレワークのマナーへ移行する
緊急事態宣言が発令されたのが、年度初めということもあり、今年の新人研修は、「3密」を避けるため、研修を取りやめるか、あるいはオンラインでの研修に切り替えた会社も多いでしょう。
その時に、例えば従来の新社会人のマナーとして当たり前だった、
「お辞儀の仕方」
「報告書の書き方」
「報連相」
などだけでなく、テレワークをスムーズに行うためのものも、今後は必要になるのではないでしょうか。
例えば
「チャットコミュニケーション」
「タスク管理ツールを通じた依頼の方法」
「名刺管理ツールを通じた、名刺交換の方法」
などを、研修のメニューとする会社もあるでしょう。
先ほど述べた通り、不要不急の外出を避けなければならない働き方は、今後永きに渡って継続する可能性も十分にあります。テレワークはさらに進んでいくでしょう。
そう考えれば、「テレワーク」が支障なくできる「適応の早い人々」はすでに半歩先を行く勝ち組であり、「スキルの高い社会集団」とも言えるのではないでしょうか。
*1 出所)内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」