働き方改革の一環で、副業する機会があったとしても、そもそもお金を稼ぐ方法は、どんなものがあるのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
お金を稼げば、法律に基づき、税金を支払う必要性が出てきます。
そこで、税法を知れば、どんな稼ぎ方があるのかが見えてきます。
税法を見れば稼ぎ方がわかる
自営業やフリーランス、不動産による収入のある人は、確定申告の時期になれば、自分で税金の計算をし、確定申告を行います。
しかし、会社員として働いていると、税金の計算にしても、会社が源泉徴収して代わりに税金を納めてくれるというシステムになっているため、給与以外の稼ぎ方を意識する機会というのは、あまり多くはありません。
そのような中で、いざ副業をしてみようかと考えた時に、どんな稼ぎ方があるのかや、税金はどうすればいいのかなど、疑問が出てきます。
収入を得れば、必ず税金の話が出てきますし、副業ともなると、自分で税金の計算をし、納付までを行わなければなりません。税法には、得られた所得に応じてどのように計算を行うのかということが、細かく決められています。
ということは、税法を見れば、どんな稼ぎ方が考えられるのかという稼ぎ方の概要や、税額を計算するうえでの注意点が見えてくるのです。
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10種類の所得からわかる稼ぎ方のパターン
個人が稼いだお金に対して課される税金が、所得税です。これに対して、贈与によって財産を取得した場合には、贈与税が課され、相続によって財産を取得した場合には、相続税が課されます。このように、どのようにしてお金を手に入れたのかによっても、課される税金が違ってきます。
ここでは「稼ぐ」ということに着目しますので、所得税について見ていきましょう。
所得税法では、所得を10種類に分類しています。なぜ細かく分類する必要があるのかというと、同じ金額の所得であったとしても、その金額を得るのに要する時間や費用、労力には違いがあり、同じ計算方法で税額を計算するのが不適当だからです。
よって、所得の種類を細かく分けたうえで、その所得の性格を考慮した方法により、税額の計算が行われるという仕組みになっています。
具体的に10種類の所得とは、次の10項目です。*1
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
所得は必ず、この10種類のうちのどれかに該当することとなります。これらの所得を共通点によってグループ分けすると、お金の稼ぎ方にはどんなものがあるのかが見えてきます。
まず、利子所得、配当所得、不動産所得の共通点は、資産の運用による所得であるという点です。自らが働いて収入を得るのではなく、資産に代わりに働いてもらうというものです。(いわゆる「不労所得」と呼ばれるものです。)
これに対し、事業所得、給与所得、譲渡所得、山林所得の共通点は、物やサービスを提供し、その対価として得られるものです。退職所得に関しては、長年の勤続に対する対価であることを考えると、これもサービスを提供して対価を受け取ることで得られる所得に含まれます。
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。*2主なものとしては、懸賞や福引きの賞金品などが該当します。
雑所得については、これまでに出てきた9種類の所得のいずれにも該当しないものが、雑所得に分類されることとされています。雑所得に該当する主なものとしては、公的年金等があり、その他にも、ちょっとしたお小遣い稼ぎ程度のものも、雑所得に分類されます。*3
このように、10種類の所得を共通点でグループ分けしてみると、主なお金の稼ぎ方としては、資産の運用と、物やサービスの提供により対価を受けることの2つが挙げられます。一時所得のように、懸賞によってお金を稼ぐという方法もありますが、安定して収入を得るということを考慮すると、現実的とは言えません。
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具体例を当てはめてみる
所得は10種類に分類され、それぞれ税額の計算方法は違ってきますが、実際には、どれに分類されるのか迷うことがあります。会社員が副業で稼ぐということを前提に、どのような取扱いになるのか見ていきましょう。
まず、会社員として働きながら、アルバイトとしても仕事をする場合を考えます。雇用契約に基づく役務の提供に対するものは、独立して事業を行うものではないため事業所得にはならず、給与所得に該当します。
次に、株で稼ぐ場合、配当として得た所得は、配当所得に分類され、売買差益により得た所得は、譲渡所得に分類されます。同じ株に係る所得といっても、配当と売買差額とで、それぞれ扱いが異なるため、この2つは分けて税額を計算しないといけないとうことに注意が必要です。
それでは、自分の特技を生かしてネット上でビジネスをする場合には、どうなるでしょうか?
規模が小さく、単なるお小遣い稼ぎ程度のものでしかない場合には、雑所得に分類されることになります。
問題は、ある程度規模が大きくなってきた時に、どのような取扱いになるかです。事業所得として認められるためには、事業者が事業として行ったものであると認められなければなりません。
事業とは、同種の取引を反復して行い、その状態が長期間にわたって継続し、さらに、誰からも雇われずに独立して取引を行うという3つの要件を満たすものをいいます。*4この要件を満たせば、会社員であったとしても、個人事業主に該当することとなります。
しかし、個人事業主に該当したとしても、会社員の場合には、時間と労力の大部分は、本業に費やされることになります。事業として認められるためには、それなりの時間や労力が費やされていることなども重要な要素であるため、会社員が副業として行う仕事が事業として認められるのは、ハードルが高いと考えられます。
自分は事業所得だと思って申告したものが認められなかった場合、雑所得として修正申告することになります。過去にも大学の准教授が、執筆及び講演等の業務から生じる所得を事業所得として申告したところ、これが認められず、雑所得であるとされた例があります。*5
仕事内容が専門性の高いものであったとしても、片手間で行うようなものであれば、事業としては認められないでしょう。
ただ、必ずしも会社員の副業というだけで雑所得に分類されるというものでもなく、中には事業所得として認められるものもあります。事業所得として考えていいのか迷った時は、税務署や税理士に確認することが必要です。
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自分に合った稼ぎ方を
お金を稼ぐと言っても、さまざまなやり方が存在します。ただ、やり方はたくさんあったとしても、大枠でとらえるのであれば、お金の稼ぎ方は、資産を運用するか、物やサービスを提供して対価を得るかのどちらかです。
必要なスキルや資金によって、どれが自分に一番合った稼ぎ方になるのかも違ってきます。
お金を稼ぐ方法を考える際に、どの所得として取り扱うことになるのかを知っておけば、トラブルの回避にも役立ちます。副業をお考えの際には、ぜひとも参考にされてみてはいかがでしょうか。
*1 出所)国税庁「No.1300 所得区分のあらまし」
*2 出所)国税庁「No.1490 一時所得」
*3 出所)国税庁「No.1500雑所得」
*4 出所)国税庁「No.6109 事業者とは」
*5 出所)国税不服審判所「平成26年9月1日裁決」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)