消費税法の取引の考え方を身近な例を使って解説

消費税法の取引の考え方を身近な例を使って解説

2019年10月より、それまで一律だった8%の消費税率が、増税と軽減税率の導入によって、10%のものと8%のものに分かれました。

消費税が課税される取引が10%のものと8%の二つになったことになりますが、消費税法上はこれ以外にも、不課税取引、非課税取引、免税取引と呼ばれるものがあります。たくさん区分があって難しそうに思えますが、消費税法の基本的な考え方を知れば、その違いが分かります。

身近な例を取り上げ、その取引がどの区分に該当するのか、なぜそのような考え方になるのか、見ていきましょう。

おみくじ、御朱印には、消費税はかからない

国内において、事業者から、物やサービスの引き渡し、提供を受け、それに対して対価の支払いをした時に課税されるのが消費税です。消費税法の適用対象となるには、この要件を満たす必要があります。

この考え方に基づけば、神社やお寺で、おみくじや御朱印をいただく際には、消費税が課税されるはずですが、実際には消費税は課税されません。宗教的なものだから課税しないようにしているのではないかと思われるかもしれませんが、後述する非課税とされる取引の中に、おみくじや御朱印は含まれておりません。

それにも関わらず、なぜ消費税が課税されないのでしょうか。それはこの取引が消費税法の適用対象に該当しない不課税取引と呼ばれるものに該当するからです。

おみくじや御朱印をいただいたことに対するお礼としての金銭の納付取引です。この場合も、相手に渡した金銭は、お礼として渡されるものであって、寄附金として扱われます。寄附金を渡すという行為は、相手から物やサービスの引き渡し、提供を受けていないため、消費税法の適用対象とはなりません

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「消費」という考え方になじまないもの

消費税は、消費される物やサービスの購入取引に対して課税されるものです。使用すれば消えて無くなるものや、時間や労力を費やすものの取引に対して課税するという消費税の性格上、消費されて無くなってしまうものではないようなものは、「消費」という考えになじみません

よってそのようなものは、「消費」という考え方になじまないため、例外的なものとして課税の対象からは除かれます。*1このように、例外的に課税の対象から外されたものを、非課税取引と呼びます。

例えば、土地付きの一軒家を購入する場合を考えましょう。

土地の上に立つ住宅は、時間の経過とともに劣化していき、やがて取り壊されますが、土地は消費されて無くなってしまうようなものではありません。よって、住宅部分には消費税が課税されるものの、土地そのものは非課税です。*1

別の例でいうと、株の購入に関しても、株は会社の所有権を細分化したものですので、消費されて無くなるものではありません。よって、こちらも非課税取引となります。

その他に、身近なもので非課税取引となるものとして、商品券や図書券、ビール券といった物品切手と呼ばれるものの購入が挙げられます。*2

こちらは、消費されて無くなってしまうものではありますが、その性格は、商品代金の前払いです。そのような前払金の性格を有しているものの場合、物品切手の購入に消費税を課税してしまうと、物品切手を使って商品を購入する際と合わせて消費税を二重に課税してしまうことになります。そのため、前払金の性格を有する物品切手の購入は、非課税取引として課税の対象からは除かれます。

このように、消費という考えに照らし合わせた結果、それになじまないようなものは、課税の対象からは除かれ、非課税取引として扱われます

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社会政策上の配慮があるもの

消費税の非課税取引の中には、社会政策上の理由から、課税の対象から除かれたものも含まれています。主に学校教育、福祉、医療が関係するもので、条文中に限定列挙されています。*1社会福祉的な性格のものが多く、そのようなものは課税の対象から除かれます

その他にも、住居に関しても、居住の用に供する目的で部屋を借りた場合、家賃は非課税となります。

ただし、同じ部屋借りる場合であったとしても、事務所として使用するのであれば、居住の用に供するわけではありませんので、こちらは課税されることとなります。また、居住の用に供するといっても、居住の期間が1か月未満の場合には、課税の対象とされます。*3

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どこで消費されるのかも関係がある

消費税法の重要な考えの一つに、消費地課税主義
というものがあります。*4消費税を課税する取引は、日本国内において行われた物やサービスの消費に係るものに限定する
というものです。

例えば、外国人観光客が、日本国内で物品の購入をした場合を考えましょう。

外国人観光客が、日本国内で何か食料品を購入して、それをすぐに食べたとすれば、日本国内において消費されたわけですから、消費税が課税されます。

一方、外国人観光客がお土産を購入し、それを国外に持ち出す場合、消費される場所は日本国内ではなく、外国になります。そうなると、消費地課税主義の考えにより、消費税は免除されることとなります。

このように、購入されたものの消費される場所が日本国内にないことによって、消費税が免除される取引が、免税取引と呼ばれるものです。

ただし、免税を受けるためには、購入した物品を国外に持ち出す旨を誓約する手続きが必要となります。これに反して日本国内において消費した場合には、消費税を支払うこととなります。

輸出取引に関しても、輸出した物品が最終的に消費される場所は外国であることから、消費地課税主義の考えに基づき、免税取引に該当することとなります。

免税取引は、非課税取引と似ていますが、課税の対象から除かれているというわけではなく、税率を0%として課税することで、消費税の支払いが生じないような仕組みになっているという点で異なります。*5

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まとめ

軽減税率の導入によって、税率が10%なのか、それとも8%なのかという区分について意識する機会は増えました。

その一方で、消費税法上は課税取引以外にも、不課税取引、非課税取引、免税取引といった取引区分があります。消費税の計算を行う場合でもない限り、これらの取引区分について意識することは、あまりありません。

しかしながら、取引区分について知っておけば、税率が変更された際に、直接影響を受けやすい取引なのか、間接的に影響を受ける可能性があるものなのかが分かります。また、表示されている金額に、税込み、税抜きが明示されていない場合に、その金額には消費税が含まれているのかを判断できるようになります。ぜひ、基本的な考え方の理解として参考にしてみてはいかがでしょうか。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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