ポイント
~宇宙が「夢の世界」から「成長産業」へ変わる時代~
かつて、宇宙開発は国家プロジェクトが中心でした。米国の「アポロ計画」に代表されるように、宇宙開発は技術力や国力を象徴する存在であり、多額の国家予算を投入して開発が推進される分野でした。しかし現在、宇宙開発に関わる企業群が形成する宇宙産業を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。
その象徴が「民間企業の本格参入」です。
米国では、SpaceXに代表される民間企業が宇宙輸送コストを大幅に引き下げ、人工衛星の小型化や打ち上げ手段の多様化が進んだことで、宇宙開発は国家だけのものではなく、ビジネスの舞台として急速に広がり始めています。日本でも政府が宇宙産業を重要戦略産業として位置付け、2030年代早期に国内の宇宙産業の市場規模を約8兆円まで拡大する目標を掲げています。*1
こうした環境変化の中で、R&Dの投資テーマとして宇宙関連株式を取り上げることとしました。
宇宙関連株式とは、ロケットや人工衛星を開発する企業だけではありません。衛星通信、衛星データ活用、部品・素材、半導体、ソフトウェアなど、宇宙空間での経済活動全体を支える企業群も含まれます。宇宙市場の拡大は、広範な産業へ波及する可能性があり、今回R&Dの投資テーマとして取り上げた要因の一つとなっています。
本稿では、宇宙関連株式になぜ注目しているのか、その背景について詳しく解説します。
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宇宙産業は長期成長が期待される市場
投資テーマを検討する際には、市場規模や市場環境の変化も一つの着目点となります。
どれほど優秀な企業であっても、市場全体が縮小していれば高い成長を実現することは容易ではありません。その点、宇宙産業は今後数十年にわたる成長が期待される分野の一つと考えています。
経済産業省は、日本の宇宙市場規模について、2020年の約4兆円から2030年代早期には約8兆円へ拡大する目標を掲げています。*1
世界に目を向けると、その成長余地はさらに大きくなります。内閣府の資料によると、世界の宇宙産業の市場規模は2025年時点では約6,000~7,000億ドル規模ですが、2030年には1兆ドルを超え、2035年には約1兆8,000億ドル規模まで拡大すると試算されています。*2
※上記は経済産業省および内閣府の試算によるもので将来を保証するものではありません
その背景には、
- ロケット打ち上げコストの低下
- 人工衛星の小型化
- 衛星データ活用の拡大
- 安全保障需要の増加
- 通信インフラ需要の拡大
といった複数の成長要因が考えられます。
つまり宇宙産業は、一時的な流行ではなく、通信やインターネットのように社会基盤を形成する長期テーマとして成長する可能性があると考えています。
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私たちの生活はすでに宇宙に支えられている
宇宙産業というと、「まだ先の話」と感じる人も少なくありません。
しかし実際には、宇宙産業で利用されている技術がすでに私たちの日常生活を支えています。
例えば、
- GPSによる位置情報サービス
- カーナビゲーション
- スマートフォンの地図アプリ
- 気象予報
- 災害監視システム
- 衛星テレビ
- 国際通信ネットワーク
など、これまでの宇宙開発で発展した技術の恩恵は多岐にわたっています。
近年はさらに人工衛星から得られるデータを活用し、
- 自動運転
- スマート農業(遠隔操作)
- 環境モニタリング
- インフラ点検
- 災害対策
など様々な分野への応用が進んでいます。
宇宙は、研究開発や探査を中心とした領域から、通信・データ活用・安全保障等の分野では実用市場へと移行しつつあります。
宇宙関連企業への投資は、こうした新しい社会インフラの普及と関わりのある企業群への投資という側面もあります。
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国家戦略として推進される産業
宇宙産業の事業環境の特徴として重要な要素の一つが、政府による支援です。
一般的に新産業は、市場の形成に時間を要することや、多額の初期投資が必要となることなどが課題として挙げられます。
しかし宇宙産業では、この問題を政府が支援する構造が形成されつつあります。
日本政府は宇宙戦略基金を創設し、研究開発やスタートアップ支援を資金面で後押ししています。さらに防衛・安全保障分野でも宇宙の利用が重要視されており、政府自らが宇宙空間で生み出される各種サービスの利用者となっています。
これは宇宙産業の事業環境を考えるうえで重要な特徴の一つです。
なぜなら、企業が新しいサービスを提供しても利用者がいなければビジネスは成立しません。しかし宇宙分野では、政府が一定の需要を創出することで民間企業の事業化を支援する構図が生まれています。政府が継続的に関与している点は、宇宙産業の市場環境を考えるうえでの特徴の一つと考えられます。
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「作る」「支える」「使う」企業に広がる投資機会
宇宙産業は多様な企業で構成されています。
宇宙産業は大きく次の3つに分類できると考えています。
① 宇宙を「作る」企業
ロケットや人工衛星、関連機器などを開発・製造する企業群です。
日本にも宇宙を「作る」複数の企業が存在しています。
②宇宙を「支える」企業
宇宙で構築されたインフラを維持する企業です。
例えば、
- 地上局運営
- 衛星管制
- 宇宙状況監視
- 通信設備
などを担います。
③ 宇宙を「使う」企業
宇宙技術の活用範囲はさまざまな分野に広がっています。
衛星通信や衛星データを利用し、
- 農業
- 防災
- 自動運転
- 物流
- AI解析
など新たな価値を生み出します。
つまり宇宙関連株式への投資は、単なるロケット投資ではなく、宇宙空間で活躍する企業などの経済全体を対象とするテーマと捉えることができます。
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日本企業の「空白」
現在、既に投資可能となっている宇宙関連株式ファンドや、関連指数は欧米企業中心の組入である一方、日本企業への投資はまだ限定的になっています。
その結果、今回のR&Dでは日本の企業に着目しています。
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まとめ
宇宙産業は、国家主導の研究開発を中心とした段階から、民間企業によるサービス提供や事業化が進む実用段階へと移行しつつあります。政府による産業育成政策や、衛星通信・衛星データ活用の拡大などを背景に、市場や技術の発展動向が注目される分野の一つとなっています。また、宇宙関連ビジネスはロケットや人工衛星の開発にとどまらず、通信、半導体、素材、ソフトウェア、データ解析など幅広い産業と関連しており、宇宙経済の拡大が他産業へどのような影響を与えるのかという観点からも興味深いテーマといえます。
一方で、宇宙産業は依然として発展途上の側面を持ち、技術開発、事業化、制度整備、市場形成などに関して不確実性も存在します。そのため、個別企業の評価や将来性については様々な見方があり、今後の技術進展や政策動向、市場環境の変化を継続的に確認していくことが重要です。
宇宙は私たちの日常生活を支える重要な社会インフラの一部となりつつあります。宇宙関連株式を考察することは、単に特定の業種や企業を捉えるだけではなく、次世代の社会基盤や産業構造の変化を理解する上でも有益な視点を提供すると考えられます。
「本稿は特定の有価証券の推奨や将来の運用成果を示唆するものではなく、宇宙産業を取り巻く技術・産業構造の変化について考察することを目的としています。」
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